相続土地国庫帰属制度の要件|崖地に適用できるか徹底解説

相続したいらない土地を国が引き取る相続土地国庫帰属制度が令和5年4月27日から開始しましたが、無条件で引き取ってもらえるわけではありません。
承認の対象となる土地の要件があります。
相続土地国庫帰属制度について詳しく知りたい方は以下をご覧ください。
相続土地国庫帰属制度の要件|山林や農地の適用可否 

土地の承認申請の却下又は不承認となる項目が10項目あり、そのうちの1つの項目として、「崖がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの」があります。
ここでは、崖がある土地や処分方法について解説します。

1.崖がある土地とは

崖がある土地とは、平坦な地面ではなく高低差がある場所で地表面が水平面に対し相当の角度をなす土地をいいます。
相続土地国庫帰属制度の不承認事由の基準となる「崖のある土地」は政令により、勾配が30度以上であり、かつ、その高さが5メートル以上である場合と定められています。

なお、崖がある土地の範囲ですが、必ずしも申請土地だけで判断はされません。
社会通念に照らして「一個の崖」を認定します。
つまり申請土地が崖の一部である場合には、申請土地以外の周辺の土地を含めて「一個の崖」と認定して崖がある土地か否か判断します。

崖がある土地の判断基準は上記の通りですが、勾配と高さの基準を満たす土地が直ちに不承認事由とはなりません。

不承認事由となる崖がある土地は、「崖がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの」となります。
つまり以下の2つの要件を満たす場合は、崖がある土地として不承認事由に該当します。
〇崖がある土地(勾配30度以上で、かつ高さ5メートル以上)
〇通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの

2.通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するとは

崖がある土地でも、例えば山中にあるなど、崖が広大な土地の中心にあり、かつ、周囲に家屋がないなど、仮に崖崩れが生じたとしても隣接地に影響を及ぼさない場合には、擁壁の設置や、常時監視の措置を講じる必要がなく、見込まれる管理コストは過分にならないと思われます。

このような場合には、相続土地国庫帰属制度が承認される可能性があります。

過分な費用又は労力を要する例としては、住民の生命等に被害を及ぼしたり、隣地に土砂が流れ込むことによって財産的な被害を及ぼす可能性があり、擁壁工事等を実施する必要があると客観的に認められるような場合などです。

なお、崖がある土地は「管理」に当たり過分の費用又は労力を要する場合は不承認事由となりますが、「処分」に当たり過分の費用又は労力を要するか否かは考慮しません。
崖がある土地は処分が困難であるため、「処分」の費用や労力を考慮してしまうと相続土地国庫帰属制度が使えなくなってしまいます。
つまり「処分」が大変な崖地でも「管理」の費用と労力がかからなければ適用可能となっています。

3.崖がある土地を所有するリスク

崖地を所有している場合には、崖が崩れてしまうなどのリスクがあります。

過去に一般社団法人相続財産再鑑定協会及び佐藤和基税理士事務所が相談を受けた事例では、崖地の土砂崩れが発生し、倒れた木が道路を塞いでしまい、所有者に倒れた木や土砂の撤去と擁壁工事を求められてしまったケースがあります。
他にも崖地ではありませんでしたが、台風により所有地の木が倒れてしまったなど、不要な土地を所有し続けることで様々なリスクが発生してしまう可能性があります。

崖がある土地を相続して、活用見込みがない場合には、相続土地国庫帰属制度の活用を検討した方が良いと思います。
なお、相続土地国庫帰属制度の不承認事由に該当してしまう場合や、相続以外で崖がある土地を取得した方には、山林引き取りサービスの活用をお勧めします。

4.山林引き取りサービスの活用

山林引き取りサービスは、理事長の佐藤和基(佐藤和基税理士事務所)が令和元年7月から開始したサービスで、山林等を専門に扱う不動産会社等と提携して不要な不動産を引き取るサービスです。
※地目は山林以外でも対応可能で、原野、農地、雑種地、別荘地なども引き取っています。
一部の農地は引き取りできないケースもあります。

山林引き取りサービスの具体的な内容について説明します。

〇申込ができる人
相続土地国庫帰属制度は相続等により土地を取得した人か共有者の中に相続等により土地を取得した人がいる場合でないと申請できません。
山林引き取りサービスは、取得原因を問わずに申込可能です。
相続又は遺贈だけでなく、原野商法で騙されてしまった方、売買、贈与などにより取得した方、個人か法人かを問わずご利用いただけます。
また、申込は基本的には不動産の所有者ですが、ご家族の方やご相談を受けている士業、不動産会社の方による代理でのお申込みも可能です。

〇申込先
山林引き取りサービスのお申込みは、まずはお問合せフォームからお問合せください。
※一般社団法人相続財産再鑑定協会及び佐藤和基税理士事務所のどちらからお問合せいただいても対応可能です。
お問合せをいただいた方にメール添付にて、申込書を送付しますので、申込書と必要資料(固定資産税の課税明細書など)をメール、郵送、FAXなどでお送りいただけましたら、引き取り費用のお見積りをします。
なお、事務負担の関係で郵送等で提出していただく場合は、資料の返却を行っておりません。
そのため、郵送等の場合はコピーでの提出をお願いします。

相続土地国庫帰属制度は、引取の審査に半年から1年かかる見込みですが、山林引き取りサービスのお見積りは1カ月程度で可能です。
※お急ぎの方は最短で翌日から1週間以内にお見積りを提示可能です。(お急ぎの場合は複数社での相見積りができないため、他社との比較ができない点はご了承ください。)

〇手数料について
相続土地国庫帰属制度は申請時に審査手数料が1筆当たり14,000円かかりますが、山林引き取りサービスはお見積りまでは無料となります。
引取可能な場合には、引取費用が発生します。
※基本的には引取費用をお支払いいただくサービスですが、物件によっては無償又はプラスでの売買が可能なケースもあります。

〇引き取り可能な土地
基本的には地目を問わず、すべての不動産について引き取り可能です。
農地は農地転用(他の地目に変更)可能な場合に引き取り可能です。
お見積りの結果、予算を超えてしまうなどの理由で山林引き取りサービスを利用されない方もいますが、お見積りまでは無料のため、お見積りの結果、山林引き取りサービスの利用をしない方には費用は発生しません。

崖がある土地についても引き取り可能ですので、不要な不動産の処分でお困りの方は一般社団法人相続財産再鑑定協会にご相談ください。
※相続土地国庫帰属制度の利用と同時並行でのご相談も可能です。

相続土地国庫帰属制度と山林引き取りサービスの違いを比較すると下記の通りとなります。

 
  山林引き取りサービス 相続土地国庫帰属制度
利用できる人 個人法人問わず誰でも可 相続等で取得した人のみ
共有の場合 1人だけでも可 共有者全員でないと不可
審査手数料 無料 発生する
負担金 無料又は発生する 発生する
引き取りできない土地 農地以外はなし※1 10項目ある
承認の取消し(契約不適合責任) 基本的になし※2

ある

審査期間 1ヶ月~2ヶ月 半年~1年の見込み

※1.農地は農地転用(他の地目に変更)可能な場合に引き取り可能です。
農地転用できない場合、提携先に農地所有適格法人がありますので、条件があえば引き取り可能なケースもあります。
※2.山林引き取りサービスの提携先は基本的には不動産会社であり、引き取るリスクを承知での契約となるため、基本的には契約不適合責任は発生しませんが、一部不動産会社以外が引き取り主となるケースもあるため、契約時にご確認ください。

5.山林引き取りサービスの引き取り後の活用例

山林引き取りサービスをご利用いただく不動産は、売買や寄付ができずに手放せない物件となりますので、一般的には活用が困難であるケースが大半です。
そのため、引き取り後に長期保有となってしまうことが多いですが、活用できるケースでは下記のようなものがありました。
〇キャンプ場やサバゲーとして利用
〇別荘地として利用
〇キノコの栽培目的で利用
〇植木屋が植木を育てるために利用
〇林業として利用
〇猟師が狩猟目的で利用
〇自然保護活動をしている団体が自然を再生すために利用
〇太陽光発電設備の設置のために利用(農業を継続できる営農型太陽光発電など)

6.山林・原野・別荘地・農地を手放す相談

不要な不動産の処分でお困りの方は、一般社団法人相続財産再鑑定協会及び佐藤和基税理士事務所にご相談ください。
山林引き取りサービスは審査手数料等が発生しませんし、お見積りまでは無料となりますので、気軽にご相談できます。
また、相続土地国庫帰属制度の利用と同時並行でのご相談も可能です。

7.不動産業界にお勧めの資格

不動産業界は、物件の売買・賃貸を仲介する不動産仲介業者、商業施設、ビル、マンション等の開発業者、注文住宅等を手がけるハウスメーカー、マンションや一戸建ての販売を手がける住宅販売会社、不動産物件を管理する管理会社など、その業務は多岐にわたります。

不動産業の方には相続土地国庫帰属診断士の資格がお勧めです。

多岐にわたる不動産業の中でも、山林、原野、別荘地、農地などの問題解決は困難なものですし、専門に扱う方は少ないのが実情です。
相続土地国庫帰属診断士は、相続土地国庫帰属制度や山林引き取りサービスの内容を理解して、不要な不動産の処分にお困りの方に対して提案をすることで、問題解決にお役立ちできる可能性があります。
また、不要な不動産の問題解決をすることで、顧客との信頼関係を築くことができ、他の宅地の売買等のご相談を受けるきっかけとなります。

相続土地国庫帰属診断士について詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。

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相続税の教科書(応用編)

  • 第1章.土地評価
  • 第2章.相続税還付
  • 第3章.生命保険
  • 第4章.相続手続
  • 第5章.生前対策
  • 第6章.相続と相続税
  • 第7章.山林等の処分
  • 第8章.相続の統計情報