一次相続の遺産分割確定による二次相続の更正の請求の適用の有無

一次相続の遺産分割が確定し、二次相続における遺産の総額が減少した場合は、相続税法第32条の規定に基づく更正の請求に該当しないとされた事例をご紹介します。
国税不服審判所裁決事例(令和7年10月29日裁決)になります。

国税不服審判所裁決事例(令和7年10月29日裁決)について、詳しく知りたい方は「国税不服審判所(令和7年10月29日裁決)」をご覧ください。

1.国税不服審判所裁決事例(令和7年10月29日裁決)の主な事実関係

国税不服審判所裁決事例(令和7年10月29日裁決)の主な事実関係をまとめると以下の通りとなります。

・平成26年10月に父が死亡(一次相続発生)
・法定相続人は妻、子3人の計4人
・一次相続においては、課税価格の合計額が基礎控除額以下のため、相続税の申告は行っていない。
・平成28年3月に母(一次相続の被相続人・父の妻)が死亡(二次相続発生)
・法定相続人は子3人
・二次相続においては、未分割のため、法定相続分で相続税申告を行った。
・一次相続に係る遺産については、法定相続分で取得したものとして平成30年12月に修正申告等を行った。
・令和6年3月22日付で一次相続及び二次相続の遺産分割協議書を作成し遺産分割が確定した。(一次相続の遺産分割では、母は遺産を取得しないこととした)
・母が相続しないことにより、二次相続における遺産の総額が減少し、相続税額が減少することから、相続税法第32条の規定に基づき、令和6年5月7日に更正の請求を行った。
・原処分庁は、令和6年8月26日付で、更正をすべき理由がない旨の各通知書分をした。
・令和6年11月22日に審査請求をした。
・令和7年10月29日に審査請求を棄却した。

2.相続税法に規定する更正の請求

相続税法第32条第1項第1号に規定する更正の請求は、要約すると未分割申告(法定相続分により取得したものとして申告)をしていたものについて、遺産分割が行われ、納付済みの相続税が過大となったときは、遺産分割の翌日から4ヵ月以内に限り、更正の請求をすることができます。

つまり、本規定は、未分割の遺産につき、法定相続分で未分割申告をしたものについて、遺産分割が行われ、その結果、既に確定した相続税額が過大になるという相続税に固有の後発的事由について規定したものとなります。

3.一次相続の遺産分割による二次相続の遺産減少を考慮しない理由

一次相続に係る遺産分割により、二次相続の遺産総額が減少した場合も、相続税固有の後発的事由として、更正の請求が認められても良さそうに思えます。

しかし、相続税法第32条第1項第1号は、あくまでも未分割申告をしていたものについて、遺産分割が行われた結果、相続税が過大となったものについて、認められるものであり、当初の申告に存在するとされる「過誤の是正」を求めることを目的とするものではないと解されています。

つまり、相続税法の更正の請求は当初の申告により確定した遺産の価額を基礎とすべきであり、当初の申告により確定した遺産の価額を前提としない更正の請求は該当しないと判断されました。
※一次相続に係る遺産分割で二次相続の遺産総額が減少するということは、当初の申告により確定した遺産の価額が変わるということになります。

4.国税通則法に規定する更正の請求

今回の国税不服審判所裁決事例では、国税通則法に規定する更正の請求の除斥期間(時効のようなものです)を経過しているため、適用はできませんが、法定申告期限から5年以内であれば、国税通則法に規定する更正の請求は認められたと思います。

国税通則法第23条第1項第1号に規定する更正の請求は、要約すると申告書の課税標準等、税額等の計算が法律の規定に従っていなかったこと又は計算に誤りがあったことにより、納付済みの税額が過大となったときは、法定申告期限から5年以内に限り、更正の請求をすることができます。

5.二次相続はイレギュラーが発生しやすい

一次相続が未分割の状態で二次相続が発生すると今回の事例のように税負担が大きくなってしまうケースもありますが、逆に税負担が小さくなってしまうケースもあります。

一般社団法人相続財産再鑑定協会の理事長である税理士・佐藤和基が扱った事例では、一次相続で未分割申告(各種特例適用なし)をし、二次相続が発生(相次相続控除適用)した事例について、遺産分割が確定するまでに長期間を要していました。
一次相続の遺産分割確定時に相続税法の規定に基づき更正の請求(各種特例を適用)をして多額の還付を受けましたが、二次相続については、本来は相次相続控除が減ってしまうことから、計算上は追徴課税になるべきですが、更正処分の除斥期間を経過していたことから、二次相続の税負担は本来よりも大きく減りました。

税負担が大きくなってしまうケースと逆に小さくなるケースがありますが、どちらのケースも狙ってできるものではありません。(専門家が関与しても防ぐことは容易ではありません。)
法令そのものに不備があるようにも感じますが、争いにより未分割の状態が長くなってしまうと不合理な結果になってしまうことがあります。

争いは税負担だけでなく、訴訟費用等の経済的負担の他にも時間と労力がかかってしまい、相続人間の関係性も修復不可能になってしまいますので、争いにならないように対策することが重要だと思います。

6.専門家への相談

一次相続と二次相続が相次いで発生するケースでは、イレギュラーなことが発生しやすくなってきます。
例えば、配偶者が相続する場合には配偶者軽減で大きく税負担が下がりますが、あえて配偶者が相続しても配偶者軽減を適用しないことで節税できるケースもあります。

二次相続が発生してお困りの方は、一般社団法人相続財産再鑑定協会にご相談ください。
理事長の佐藤和基は相続税専門の税理士ですので、相続に関する知識や実績が豊富です。

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相続税の教科書(応用編)

  • 第1章.土地評価
  • 第2章.相続税還付
  • 第3章.生命保険
  • 第4章.相続手続
  • 第5章.生前対策
  • 第6章.相続と相続税
  • 第7章.山林等の処分
  • 第8章.不動産売却
  • 第9章.相続の統計情報
  • 第10章.税制改正・判例等