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令和7年12月19日に令和8年度税制改正大綱が公表されました。
こちらのページでは、不動産小口化商品について変更内容と既に購入している方、これから購入を検討している方向けに対策方法を徹底的に解説します。
不動産小口化商品とは、特定の不動産を1口100万円又は1,000万円など、小口化して販売している商品で、賃料収入等を所有口数により出資者に分配する商品です。
都市部の優良不動産を購入するには多額の資金が必要になりますが、不動産小口化商品であれば、少額から投資が可能になります。
例えば10億円の不動産を1,000口で募集する場合、1口100万円で出資することができます。
六本木ヒルズやGINZ SIXなども不動産小口化商品として販売されていました。
不動産小口化商品の種類は任意組合型、賃貸型、信託受益権型、匿名組合型の4種類ありますが、匿名組合型は時価評価となりますので、相続税の節税目的にはなりません。
賃貸型も実務上はほぼありませんので、相続税対策として実際に活用されているものは、任意組合型と信託受益権型の2種類になります。
※賃貸型は実務上、ほとんどありませんので、以下、賃貸型については割愛します。
不動産小口化商品のうち、任意組合型と信託受益権型は不動産評価となりますので、土地は路線価評価、建物は固定資産税評価額になります。
一般的には土地の路線価評価は時価の80%程度、建物の固定資産税評価額は時価の60%程度により評価され、賃貸しているものについては、借地権割合によりますが、土地は貸家建付地として80%程度の評価、建物は貸家として70%の評価になります。
上記は一般論になりますが、土地の路線価評価が時価の80%程度というのも実際には都心部と地方では大きく差が出るケースがあり、都心部では路線価評価が時価の50%程度になってしまうケースや場合によってはもっと下がるケースもあります。
また、区分所有のものなどについては、土地の面積が小さく計算されるため、より低く評価されています。
不動産小口化商品は、都心部の一等地の物件が多く、実勢価格との乖離が大きくなりやすく、購入価額に対して相続税評価額が20%程度になっていました。
中には10%程度になる物件もあります。
以上のように、圧縮率が80%程度になるため、節税効果が非常に高く、かつ、金額も100万円単位又は1,000万円単位など、少額から金額の調整も可能なことから、遺産分割もしやすく相続対策として人気の高いものとなっていました。
また、土地については、小規模宅地等の特例により上記の評価額からさらに50%の減額もできます。
中には不動産小口化商品を購入後に生前贈与と組み合わせて、さらに大きな節税効果を得ている方もいました。
例えば、1,000万円を子ども(18歳以上)に贈与する場合、贈与税は177万円になりますが、圧縮率が80%の不動産小口化商品を購入して贈与する場合には、贈与税は9万円になります。
圧縮率が90%の物件に至っては、贈与税は無税となりますので、節税効果は非常に高いことがわかります。
なお、以前はタワーマンション節税が流行っていましたが、令和6年1月1日以降は、居住用の区分所有財産の評価について、相続税評価額が時価の60%水準になるように改正されました。
しかし、居住用の区分所有財産は、居住用の区分所有建物に限られることから、居住用のものについては1棟の建物であれば規制に引っかからず、区分所有建物についても事業用のオフィスであれば引っかからないため、不動産小口化商品は、上手く規制を回避した商品となっていました。
一般的な相続税の節税対策である、生前贈与や生命保険金等の非課税枠の利用については、金額の上限がありますが、不動産小口化商品は基本的には金額の上限もなく、ほぼ無制限に節税ができてしまうため、令和8年度税制改正で評価方法を見直すことになりました。
※節税金額が億単位になるなど、行き過ぎた大幅な節税の場合は、財産評価基本通達6項によって個別に否認することはできますが、財産評価基本通達6項の年間の適用件数は下記の通り、非常に少なくなっています。
| 年分 | H27 | H28 | H29 | H30 | R1 | R2 | R3 | R4 | R5 | R6 | 計 |
| 件数 | 2 | 0 | 4 | 0 | 1 | 1 | 0 | 6 | 11 | 2 | 27 |
| 不動産 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 3 | 5 | 2 | 13 |
| 株式 | 1 | 0 | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 | 6 | 0 | 14 |
財産評価基本通達6項は「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の評価は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」と定められています。
曖昧な表現のため、適用要件がわかりにくいですが、「行き過ぎた節税対策」に適用されます。
ただし、財産評価基本通達6項は伝家の宝刀と言われ、むやみやたらに適用されることはありません。
上記の適用件数の通り、特に節税金額の高いものに適用されています。
不動産小口化商品のうち、任意組合型又は信託受益権型の貸付用不動産については、その取得の時期にかかわらず、相続開始時又は贈与時における通常の取引価格に相当する金額によって評価することになりました。
この「通常の取引価格」とは、課税上の弊害がない限り、次の①、②又は③に掲げる価格等を参酌して求めた金額によって表します。
①出資者等の求めに応じて事業者等が示した適正な処分価格、買取価格等
②事業者等が把握している適正な売買実例価額
③定期報告書等に記載された不動産の価格等
ただし、上記①、②又は③に該当するものがないと認められる場合には、貸付用不動産の評価方法準じて取得価額をベースに80%で評価します。
この改正は令和9年1月1日以後に相続等により取得をする財産の評価に適用されます。
改正前と改正後の評価方法をまとめると下記となります。
| 改正前の相続税評価額 | 改正後の相続税評価額 |
| 土地:路線価評価 | 土地・建物ともに |
こちらの改正は取得時期にかかわらず、通常の取引価額に相当する金額により評価されることになりますので、令和9年1月1日以後については、節税効果はなくなってしまいます。
不動産小口化商品のうち、任意組合型又は信託受益権型を購入している方については、相続開始のタイミングによって評価方法が異なることになります。
| 相続開始のタイミング | 相続税評価額 |
| 相続開始が令和8年12月31日まで | 従来の評価方法(つまり節税効果あり) |
| 相続開始が令和9年1月1日以降 | 改正後の評価方法(つまり節税効果なし) |
何も対策をせずに令和9年を迎えると不動産小口化商品による節税効果はなくなってしまいます。
事前の対策としては、令和8年12月31日までに生前贈与する方法が考えられます。
生前贈与には暦年課税と相続時精算課税制度の2種類あります。
どちらを使った方が良いのかは、不動産小口化商品の購入金額の大小や贈与者の年齢等によっても異なりますので、生前贈与を実行する場合には、必ず相続税専門の税理士など、詳しい専門家に相談する必要があります。
一般的な考え方をまとめると、以下のようになります。
【暦年課税】
暦年課税の贈与は、年間110万円の基礎控除がありますが、贈与者が贈与から7年以内に亡くなってしまった場合には、相続税の計算上、生前贈与加算(生前贈与した金額を合算することです)をする必要があります。
なお、生前贈与加算の対象となる者は、「相続又は遺贈により財産を取得した者」のため、相続又は遺贈により財産を取得しない者であれば、生前贈与加算をする必要がありません。
例えば、相続の時に財産を取得しない孫や子の配偶者などです。(孫や子の配偶者でも遺言書で財産を取得する場合などは生前贈与加算の対象となってしまいます)
控除が年間110万円の基礎控除しかないのと、7年以内に相続が発生した場合には生前贈与加算の対象となってしまいますので、不動産小口化商品の購入金額が少額である場合や贈与者が若いケース又は贈与者が高齢でも生前贈与加算の対象とならない孫等に贈与するケースでは、暦年課税による贈与が有効になります。
なお、7年以内に相続が開始して、生前贈与加算の対象になってしまう場合でも、相続税の計算の際に合算する金額は、相続開始時の時価ではなく、「贈与時の時価」となります。
そのため、令和8年12月31日までに贈与をすることで、「改正前の従来の評価方法」で計算をすることができます。
【相続時精算課税制度】
相続時精算課税制度による贈与は、名称の通り、相続発生の時に、相続時精算課税制度を利用して贈与した金額を期間に関係なく無制限に相続税の計算上、合算する必要があります。
暦年課税のように7年以内などの上限がなく、何年前でも無制限に合算する必要があるため、以前は節税としては使い勝手の悪い制度でした。
ただし、相続時精算課税制度には一生で2,500万円までの贈与については贈与税がかからない特別控除があります。
また、令和6年1月1日以降の贈与については、特別控除2,500万円とは別に年間110万円の基礎控除が設けられました。
暦年課税の基礎控除110万円と金額が同じであるため、わかりにくいですが、相続時精算課税制度の基礎控除110万円については、相続開始の際に一切合算しなくても良いものとなっています。(暦年課税の基礎控除110万円は、7年以内は生前贈与加算の対象になるため、明確な違いとなります)
理由としては、相続時精算課税制度の利用を促進させるためのインセンティブとして、差が設けられているのだと思います。
なお、年間110万円を超える贈与をした場合、特別控除2,500万円までは贈与税は発生しませんが、相続開始時に期間に関係なく無制限に合算されてしまうため、年間110万円を超える贈与は、基本的には節税効果はありませんが、相続開始時に合算される金額は「贈与時の時価」になります。
そのため、将来、時価の上がる財産や税制改正により評価額が上がってしまう財産については、評価額が上がる前の「贈与時の時価」で贈与できるため、令和8年12月31日までに贈与をすることで、「改正前の従来の評価方法」で計算をすることができます。
相続時精算課税制度は、贈与者が高齢の場合や不動産小口化商品の購入金額が高額で暦年課税では贈与税の負担が大きくなる場合に有効になります。
上記の暦年課税と相続時精算課税制度は、一般的な考え方として解説していますが、勘違いの発生しやすい論点のため、内容を十分に理解してから判断する必要があります。
※相続時精算課税制度は一度適用すると撤回できませんので、注意が必要です。
これから不動産小口化商品を活用した節税を検討している方については、令和9年1月1日以降は評価方法が変更となり、節税効果がなくなってしまうため、より慎重に判断をする必要があります。
今までは、不動産小口化商品の節税効果が高過ぎるのと、生前贈与を組合わせるとさらに節税効果が高くなり過ぎてしまうため、やり過ぎると目を付けられて規制の対象となってしまうのではないかと懸念されていました。
そのため、不動産小口化商品の物件を扱う各社は購入直後の贈与については、あまり積極的に提案をしていませんでした。
しかし、令和8年度税制改正大綱で不動産小口化商品の評価方法に規制が入ることになりました。
令和9年1月1日以降は節税効果がなくなってしまいますが、逆に令和8年12月31日までは従来の評価方法になるため、下記のようなケースでは従来のまま節税効果もあります。
〇令和8年12月31日までに相続が発生する場合
〇令和8年12月31日までに贈与する場合
相続が発生するタイミングはわかりませんので、これから不動産小口化商品を購入して節税を検討する方は、生前贈与もセットで検討をする必要があります。
ただし、節税ありきで億単位の節税をするなど行き過ぎた節税をしてしまうと、財産評価基本通達6項による否認リスクがあるため、金額については相続税専門の税理士など詳しい専門家に相談をする必要があります。
一般社団法人相続財産再鑑定協会及び佐藤和基税理士事務所では、当事務所の紹介で不動産小口化商品を購入した方については、生前贈与をするべきか、生前贈与をする場合も暦年課税と相続時精算課税制度のどちらが良いのかシミュレーションを含めて無料対応させていただきます。
当事務所以外の税理士や金融機関の紹介で購入した方については、まずは紹介者に相談をすることをお勧めしますが、当事務所でも相談対応は可能です。
また、これから不動産小口化商品を活用した節税を検討している方についても、一般社団法人相続財産再鑑定協会及び佐藤和基税理士事務所にご相談ください。
代表の佐藤和基は相続税専門の税理士ですので、相続に関する知識や実績が豊富です。
不動産小口化商品を扱う会社は13社と提携していますので、各社の商品を比較してご紹介可能ですし、生前贈与(暦年課税と相続時精算課税制度の判断含む)のシミュレーションや財産評価基本通達6項の否認リスクの有無など、アドバイスさせていただきます。
また提携先が多いことで、不動産小口化商品に関する各種の最新情報(物件情報に限らず、税制改正等も含む各種の情報)が常に入ってきます。
令和8年度税制改正の内容を踏まえて、不動産小口化商品に関するご相談は初回の相談料を無料とさせていただきます。