生命保険による生前贈与の注意点【相続税対策】

メルマガの登録者様から「生命保険を使って生前贈与をする方法があると保険会社の方から話を聞きました。生命保険を活用すると、贈与契約書などは作らなくても生前贈与ができるようですが、税金面で何か問題になることはないでしょうか?また生命保険以外にも節税としてお勧めの対策はありますか?」というご質問をいただきましたので、こちらのページでは生命保険を使った生前贈与と他にもお勧めの節税対策についてご説明します。

1.ご質問の回答

ご質問の件について回答します。提携している保険代理店に確認したところ、生前贈与をするための保険商品があるようです。まず、一般的な生前贈与の税務上のリスクとしては、下記のものがあります。

〇贈与の有効性(税務署に贈与を否認され名義預金と指摘されるリスク)
〇定期贈与と指摘される可能性(定期金に関する権利として課税されるリスク)

贈与の有効性や定期贈与と指摘されないように、贈与の都度、贈与契約書の作成をする必要がありますし、実態が伴うように贈与を受ける方(受贈者)の普段使っている口座に振り込むなど、注意する必要があります。

そのため、保険会社の提案する商品だと、贈与契約書を作成しない、毎年給付金を受け取るなど、贈与を否認されるリスクや定期贈与と指摘されるリスクがあるように思われますが、その点のリスクは回避できるようです。

以下、生前贈与をするための保険商品の仕組みとリスクを回避できる理由について、説明したいと思います。

2.生前贈与をするための保険商品

生前贈与をするための保険商品は、保険料を一時払いして、その後選択した保険期間に渡って、毎年生存給付金の受取人に給付金が支給されるものがあります。

例えば、一時払い保険料を1,000万円、保険期間を10年にした場合には、毎年100万円の生存給付金が受取人に支払われます。※運用損益はないものとして計算しています。

具体的な運用損益については各保険会社にお問合せください。なお、生存給付金の受取人は、保険期間の途中で変更することができます。※保険会社によって内容が異なる可能性があります。

3.贈与契約書を作成しなくても否認されない理由

生前贈与をするための保険商品では、贈与契約書の作成をしていないようですが、贈与契約書を作成しなくても良い理由としては、保険会社が発行するお支払いの通知が贈与の記録となるようです。ただし、贈与契約書を作成しなくても大丈夫な理由はあくまでも形式面での話となります。

そのため、贈与の実態も伴う必要がありますので、生存給付金を受け取る口座は受取人が普段使っている口座である必要があります。まとめると以下の通りになります。

〇保険会社の発行する「お支払いの通知」が贈与契約書の代わりとなる。(形式面)
〇生存給付金を受け取る口座は受取人の管理している口座である必要がある。(実態面)

贈与を否認されないため(名義預金と指摘されないため)には、形式面と実態面の両方を備えることが大切です。

なお、実態面の否認リスクを回避するために、生存給付金の受取人が他の貯蓄系の生命保険などを契約することで、名義預金と指摘されないようにするケースもあります。

つまり受取人が保険契約を行うことで、生存給付金を受取人本人の意思で使ったことになり、口座の管理も受取人自身が行っていると主張できます。

生前贈与の注意点について詳しくは「現金手渡し等の生前贈与を税務署に否認されないための注意点」をご覧ください。

4.定期贈与と指摘されない理由

生前贈与をするための保険商品は、保険料を一時払いすることで、毎年の生存給付金もある程度決まってくるため、一見すると定期贈与と指摘されるリスクがあるように感じます。

しかし、以下の理由から定期贈与には該当しないようです。

〇生存給付金受取人は、生存給付金の支払事由が発生するまでは生存給付金を受取る権利がない。(契約者の判断で生存給付金の受取人を変更できます。)
〇契約者(被保険者)が死亡した場合、契約は消滅し、死亡保険金受取人に死亡保険金が支払われる。

※定期贈与について詳しくは「連年贈与と定期贈与の違い|110万円以下でも贈与税が課税」をご覧ください。

5.節税保険を活用するリスク

保険会社では、様々な節税商品を開発しています。特に現行の税法の抜け道を狙った節税保険は、税制改正により抜け道を塞ぐという、いたちごっこが繰り返されています。

今回のご質問の生前贈与をするための保険商品は、保険商品特有の節税ではなく、従来からある生前贈与の節税を、手続き面で簡略化する商品となります。

そのため、節税保険の改正でメスが入る可能性は低いと思いますが、節税保険を活用する際には税制改正には注意する必要があります。

6.生前贈与と不動産小口化商品の組合せ

生前贈与や生命保険は活用がしやすく、節税対策として実行している方も多いでしょう。
生前贈与と生命保険は単体でも節税として活用できますし、生前贈与と生命保険を組合せて活用するケースも多くあります。
ですが、節税できる金額には限度があります。

そこで、さらに大幅な節税をしたい方には、不動産小口化商品がお勧めです。
不動産小口化商品は、特定の不動産を1口100万円など、小口化して販売する商品で、賃料収入等を所有口数に応じて出資者に分配する商品です。

不動産小口化商品の相続税評価額の圧縮率は80%程度になるケースが多く、単体でも大きな節税効果がありますが、生前贈与と組合せることで、さらに大きく節税することも可能です。

不動産小口化商品の相続税評価額の圧縮率が80%の場合で、生前贈与と組合せた場合の節税金額を計算します。
なお、贈与税の税率は、直系尊属から18歳以上の者への贈与の場合とそれ以外の場合で異なるため、ここでは、直系尊属から18歳以上の者への贈与(つまり親から子に対する贈与や親から孫に対する贈与)と仮定して計算します。
【不動産小口化商品の圧縮率が80%の場合の贈与税】

  現金贈与 不動産小口化商品 節税金額
500万円贈与 485,000円 0円 485,000円
1,000万円贈与 1,770,000円 90,000円 1,680,000円
1,500万円贈与 3,660,000円 190,000円 3,470,000円
2,000万円贈与 5,855,000円 335,000円 5,520,000円
2,500万円贈与 8,105,000円 485,000円 7,620,000円
3,000万円贈与 10,355,000円 680,000円 9,675,000円

上記の表の通りですが、500万円を現金で贈与する場合は、贈与税の負担は485,000円となりますが、不動産小口化商品を購入して贈与する場合は、相続税評価額が100万円になることから、贈与税の基礎控除額110万円を下回ることになり贈与税負担はゼロになります。

金額が大きくなるほど贈与税の負担も大きくなるため、多額の贈与をする時は、不動産小口化商品を活用するメリットも大きくなります。

不動産小口化商品について詳しく知りたい方は以下をご覧ください。

7.専門家への相談

生命保険を使った生前贈与について相談したい方は一般社団法人相続財産再鑑定協会にご相談ください。理事長の佐藤和基は相続税専門の税理士ですので、相続に関する知識や実績が豊富です。

生命保険を活用した相続対策のご相談については、相続に詳しい保険代理店等のご紹介が可能です。不動産小口化商品を活用した相続対策のご相談についても、不動産特定共同事業者のご紹介が可能です。生命保険や不動産小口化商品を使った節税以外についても、相続に関する相談をお受けしています。

また、納税者に損をさせない申告を信念に、これから相続税申告業務に参入される税理士向けに相続税実務研修(通信講座Web視聴)を販売しております。
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