騒音のある宅地の評価減|利用価値が著しく低下している宅地

1.騒音のある宅地

評価対象地が線路沿いにあるなどして、生活環境を損なわせ、騒音が取引金額に影響を受ける場合には、利用価値が著しく低下している宅地として評価減をすることができます。

ただし、線路沿いで騒音があるからといって必ずしも評価減が認められるわけではありません。

騒音による評価減が認められるかどうかは、路線価に織り込み済みか否か、騒音の程度(何デシベルか)、時間的発生頻度(どのくらいの頻度で電車が通るか等)などから判断します。

2.路線価に織り込み済みか否か

騒音による評価減が路線価に織り込み済みか否かは、路線価図を見て確認します。

具体的には、線路沿いの路線価が、線路から離れたところの路線価と比較して低いようでしたら、路線価に騒音による評価減が織り込み済みであるといえます。

逆に、線路沿いと線路から離れたところで路線価が同じであれば、路線価に、騒音による減額が織り込まれていないといえます。

特に線路沿いから垂直に道路がある場合、線路沿い付近から離れたところまで一律の路線価であるケースでは、騒音による評価減が織り込まれていないと判断できます。

3.騒音の程度

何デシベル以上ならいいのか、明確な判断基準はありませんが、環境基本法の規定に基づく、騒音に係る環境基準が1つの目安になると思います。

環境基準によると、療養施設、社会福祉施設等が集合して設置される地域など特に静穏を要する地域は昼間が50デシベル以下(夜は40デシベル以下)、専ら居住の用に供される地域や主として住居の用に供される地域は昼間が55デシベル以下(夜は45デシベル以下)、相当数の住居と併せて商業、工業等の用に供される地域は昼間が60デシベル以下(夜は50デシベル以下)と基準値を定めています。

そのため、60デシベルを上回るか否かが1つの目安になりそうですが、参考となる裁決例がありますので、判断基準を読み取ってみます。

国税不服審判所(平成15年11月14日裁決)

審判所の判断をまとめると下記の通りです。

①鉄道沿線土地の評価に採用されている路線価は、電車走行における騒音・振動の要因が斟酌されていないこと

②鉄道沿線土地の鉄道沿線から20m以内においては、電車走行による騒音が、環境省の騒音対策における指針である昼間の基準60デシベル、夜間の基準55デシベルの同程度を超えていること

③分譲地において分譲価額における開差が10%を超える取引事例が存在すること

この裁決例では「鉄道沿線から20m以内」「60デシベル」という数値による判断基準が示されているため、参考になります。

ただし、鉄道沿線から20m以内であれば必ず認められるわけではないと思いますし、60デシベルという数値も、住宅街と商業地域、工業地域で同一の基準で判断するのは合理的ではないと思います。
※国税不服審判所(令和2年6月2日裁決)では、鉄軌道中心線から30mの範囲内の土地が価格低下の要因となっていると認められています。(この事例では鉄軌道中心線から30mの範囲内の土地について、固定資産税評価額の減額補正がされていました。)

鉄道沿線からの距離はあくまでも1つの目安として判断するべきでしょう。
例えば鉄道沿線から10m地点、20m地点、30m地点と複数地点で騒音測定を行い個々に判断をすることになります。

なお、騒音測定をする際は、騒音レベルが平均的な平日に行い、強風時、降雨、降雪、積雪時などは避けるようにしましょう。

測定地点についても騒音測定マニュアル等にあわせて地上からの高さが1.2mで、窓又は外壁から原則として3.5m以上離れた地点を選定した方が、精度の高い騒音を測定することができると思います。

4.時間的発生頻度

時間的発生頻度についても、騒音の程度と同様に、明確な基準はありませんが、1時間に1本しか電車が通らないなど極端に頻度が少ない場合には、評価減は認められないと思います。

評価減をするためには、時間的発生頻度の多さを確認します。

具体的には時刻表などで始発の時間から終電の時間、上り、下り、各駅停車、快速など全ての本数を調べて電車が通る時間と頻度の高さを確認すると良いでしょう。

5.騒音による評価減

評価対象地が騒音により、利用価値が著しく低下していると認められる場合には、10%評価減を行います。

なお、利用価値が著しく低下している要因が複数ある場合については、20%評価減を行うことができます。
例えば、騒音があり、かつ、周辺に墓地がある場合には、騒音による減額10%と墓地周辺による減額10%を重複適用して20%の評価減を行います。

参考になる裁決事例として、国税不服審判所(平成13年6月15日裁決)があります。
こちらの裁決事例では、評価対象地が元墓地であったことにより10%の評価減を行っていることを是認した上で、震動及び騒音等により更に10%の評価減を行うことを認めています。(合計20%の評価減)

また、昭和55年6月24日付東京国税局長通達「個別事情のある財産の評価等の具体的な取扱いについて」では、2以上の事情により、利用価値が著しく低下していると認められる宅地にあっては、20%の評価減が認められていました。
現在のタックスアンサーNo.4617では、複数の要因がある場合の20%の評価減について記載がありませんが、国税不服審判所(平成13年6月15日裁決)を根拠に最大20%の評価減を行って良いと思います。

6.相続税還付の相談

騒音のある宅地について、騒音による評価減をせずに高い評価で相続税の申告をしてしまっている場合でも、亡くなってから5年10ヶ月以内であれば申告内容を修正することが可能です。払い過ぎていた分は税務署に返金してもらうことができます。

相続税の金額が適切であったか確認したい方は一般社団法人相続財産再鑑定協会にご相談ください。理事長の佐藤和基は相続税専門の税理士ですので、相続に関する知識や実績が豊富です。騒音のある宅地以外の項目についても適切であったか、相続税申告書の内容を無料で診断します。

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7.騒音のある宅地の評価根拠

騒音のある宅地の評価方法は財産評価基本通達では定められていません。そのため、根拠は国税庁のタックスアンサーNo.4617利用価値が著しく低下している宅地の評価となります。

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