不動産小口化商品とは?相続税対策に有効な理由を徹底解説

相続税の生前対策を検討している方の中には、「相続税が思ったより高かった」、「生前贈与や生命保険を活用してもまだ節税したい」、「何か大きく相続税が下がる対策はないか」など、節税にお悩みの方も多いと思います。

そんなお悩みをお持ちの方に、お勧めしているのが不動産小口化商品を活用した節税です。
相続税評価額の圧縮率は物件にもよりますが、平均は70%から90%となります。

一般社団法人相続財産再鑑定協会及び佐藤和基税理士事務所は、相続税専門の税理士として多くの方に不動産小口化商品を提案した実績がありますので、その経験から、不動産小口化商品の内容と相続税対策の節税効果や遺産分割対策にも使える点について詳しく解説します。

1.不動産小口化商品とは

不動産小口化商品とは、特定の不動産を1口100万円など、小口化して販売している商品で、賃料収入等を所有口数により出資者に分配する商品です。都市部の優良不動産を購入するには多額の資金が必要になりますが、不動産小口化商品であれば、少額から投資が可能になります。

不動産小口化商品は主に任意組合型、信託受益権型、匿名組合型の3種類があります。(他にも賃貸型がありますが、実務上はほぼありませんので、賃貸型は割愛します)
この中で相続税の節税効果があるのは任意組合型と信託受益権型の2種類です。
匿名組合型は時価評価になってしまうため、相続税の節税効果はありません。

例えば10億円の不動産を1,000口で募集する場合、1口100万円で出資することができます。なお、任意組合型は不動産を管理する業者と投資家との間で任意組合契約を締結する形で行います。投資家は出資金額に応じて不動産の持ち分を有することになります。

2.不動産小口化商品が相続税対策に有効な理由

不動産小口化商品の任意組合型と信託受益権型の相続税評価額は、通常の不動産と同様に評価をすることになります。
一般的な不動産の場合、土地の評価額は時価の80%程度になりますが、都心部など都内の土地は時価と相続税評価額の乖離が2倍以上など大きくなりやすい傾向にあります。
また、持ち分地積も小さく計算されることから圧縮率は高くなります。
さらに賃貸物件については、借地権割合に応じて土地の評価額は約20%前後の減額がされます。
その結果、時価に対して相続税評価額が70%から90%と大きく圧縮されるのです。

令和5年以前はタワーマンション節税が流行っていた時期もありましたが、評価額が圧縮される仕組みは、以前のタワーマンション節税と近い仕組みです。

3.タワーマンション節税の規制に該当しないのか?

令和6年1月1日以後の相続、遺贈又は贈与により取得したタワーマンション等については、「居住用の区分所有財産の評価」の方法により評価をすることになりました。
その結果、以前は大きく節税をすることができたタワーマンションも、時価の60%水準の評価額になり、圧縮率は40%にとどまるようになりました。

ただし、不動産小口化商品については、基本的に「居住用の区分所有財産の評価」には該当せず、タワーマンション節税の規制に引っかかりません。
その理由について解説します。

まず、「居住用の区分所有財産の評価」ですが、下記のいずれかに該当するものには適用されません。
①居住用以外のもの(事業用のテナント物件など)
②区分所有登記がされていないもの(1棟所有のものなど)
③総階数2以下の低層の集合住宅など
④いわゆる二世帯住宅など
⑤棚卸商品等に該当するもの

次に不動産小口化商品ですが、基本的には上記のいずれかに該当する物件が大半です。
例えば居住用のものであれば、区分所有登記をしていない1棟所有のものにすることで、「居住用の区分所有財産の評価」の規制に引っかかりません。
また、区分所有登記のものでもオフィスビルなど、事業用のものであれば、同じく「居住用の区分所有財産の評価」の規制に引っかかりません。

4.財産評価基本通達6項(総則6項)による否認リスクの有無

過去の判例の中にはタワーマンション節税など、大きく節税した事例について、財産評価基本通達6項により否認をされているものがあります。
財産評価基本通達6項には、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の評価は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」と書かれています。

曖昧な表現となっているため、わかりにくいですが、一言でまとめると「行き過ぎた節税対策」に適用されます。

ただし、財産評価基本通達6項は伝家の宝刀と言われ、むやみやたらに適用されることはありません。
基本的には億単位の節税対策などの場合に適用されるため、不動産小口化商品の購入金額が1億円以下の場合などは、財産評価基本通達6項の否認リスクはほとんどないと思われます。

なお、億単位など多額に購入することを検討する場合には、財産評価基本通達6項の否認リスクを考慮して、下記のような点に慎重に注意をする必要があります。
①相続直前(亡くなる直前)の対策をしない
②短期間で売却しない
③相続税対策以外の購入目的を明確にする

財産評価基本通達6項の要件は明確ではありませんので、多額の不動産小口化商品を購入する場合には、事前に一般社団法人相続財産再鑑定協会及び佐藤和基税理士事務所にご相談ください。

5.不動産小口化商品のメリットとデメリット

不動産小口化商品のメリットとデメリットをまとめると下記のものがあります。

不動産小口化商品を購入するメリット

〇少ない資金で手軽に購入できる
一般的な不動産投資では土地の購入や建物の建築等で数千万円の資金が必要になってきますが、不動産小口化商品の場合には1口100万円程度の資金で不動産投資が可能です。

〇優良物件に投資ができる
不動産小口化商品の物件は利便性が高く好立地にある物件や首都圏の一等地にある物件など高額な優良物件が多く、通常であれば数億円から数十億円単位の本来であれば手が出ないようなものも多くあります。しかし、不動産小口化商品であれば、このような本来であれば手が出ないような優良物件の持ち分を一部所有することができます。

〇相続税の節税対策に活用できる
不動産を相続する場合は、一般的に時価の80%程度の評価額になります。不動産小口化商品の場合も一般的な不動産の持ち分所有の評価と同様に評価しますが、持ち分地積が小さく計算されることから圧縮率は高い傾向にあります。さらに賃貸物件については、借地権割合に応じて土地の評価額は約20%前後の減額、建物の評価額は30%の減額がされます。

不動産小口化商品の物件にもよりますが、ここまでの減額で70%から80%程度評価額が下がるものが多くあります。また、賃貸物件は小規模宅地等の特例の適用も可能ですので、さらに50%の減額が可能です。

小規模宅地等の特例は限度面積があるため、自宅等の他に適用可能な物件がある場合は適用できないケースもありますが、不動産小口化商品の物件は好立地な優良物件が多く、路線価の単価も高いものが多いと思いますので、先に不動産小口化商品の物件から適用し、残りの面積について自宅等に適用する方が有利になる可能性もあります。なお、不動産小口化商品は少額から投資可能なため、複数の物件を所有することで遺産分割対策としても分けやすくすることもできます。

〇自分で不動産を管理する必要がない
不動産小口化商品は、業者が任意組合の代表として投資不動産の運営、管理を行いますので、投資家は物件を維持管理する手間がかかりません。

不動産小口化商品を購入するデメリット

〇利回りが低くなる
不動産小口化商品は、優良物件に投資ができ業者が運営、管理をするため手間もかかりませんが、その分、対価として業者の取り分があるため、得られる収入は低くなります。

〇融資が使えないため自己資金が必要になる
一般的な単独所有の不動産であれば、その不動産を担保に融資を受けることが可能ですが、不動産小口化商品の場合は、共同所有のため、不動産を担保に融資を受けることができません。そのため、自己資金で投資することになります。

〇元本保証、賃料収入の保証がない
不動産小口化商品は、運用期間中に運用利益を分配し、一定期間運用後、対象不動産を売却して売却益を分配する仕組みとなっています。そのため、空室の状態が続いてしまう場合や、不動産の価値が下がってしまった場合には元本割れとなってしまうリスクがあります。

〇商品数が少ない(申し込みの倍率が高い)
不動産小口化商品は、一般的な不動産と比較すると商品数が少なく、不動産小口化商品を取り扱いできる業者も不動産特定共同事業法の要件を満たし許可を受けた業者となります。そのため、購入したい希望者よりも商品数が少なく投資したくてもすぐに小口化商品が見つからない可能性があります。

6.生前贈与との組合せ

不動産小口化商品の相続税評価額の圧縮率は80%程度になるケースが多く、単体でも大きな節税効果がありますが、生前贈与と組合せることで、さらに大きく節税することも可能です。
不動産小口化商品の相続税評価額の圧縮率が80%の場合で、生前贈与と組合せた場合の節税金額を計算します。
なお、贈与税の税率は、直系尊属から18歳以上の者への贈与の場合とそれ以外の場合で異なるため、ここでは、直系尊属から18歳以上の者への贈与(つまり親から子に対する贈与や親から孫に対する贈与)と仮定して計算します。
【不動産小口化商品の圧縮率が80%の場合の贈与税】

  現金贈与 不動産小口化商品 節税金額
500万円贈与 485,000円 0円 485,000円
1,000万円贈与 1,770,000円 90,000円 1,680,000円
1,500万円贈与 3,660,000円 190,000円 3,470,000円
2,000万円贈与 5,855,000円 335,000円 5,520,000円
2,500万円贈与 8,105,000円 485,000円 7,620,000円
3,000万円贈与 10,355,000円 680,000円 9,675,000円

上記の表の通りですが、500万円を現金で贈与する場合は、贈与税の負担は485,000円となりますが、不動産小口化商品を購入して贈与する場合は、相続税評価額が100万円になることから、贈与税の基礎控除額110万円を下回ることになり贈与税負担はゼロになります。

金額が大きくなるほど贈与税の負担も大きくなるため、多額の贈与をする時は、不動産小口化商品を活用するメリットも大きくなります。

7.事例紹介

一般社団法人相続財産再鑑定協会及び佐藤和基税理士事務所が関与した事例について、一部をご紹介します。
※個人情報の関係で、登場人物等を少し変えています。

【財産1億5,000万円 推定相続人2人】
財産が約1億5,000万円で推定相続人が長男と二男の2名の事例です。
対策前の財産のうち約1億円が金融資産、約5,000万円が不動産、相続税の試算は1,840万円でした。
金融資産の約半分を今後の生活費や納税資金等として残したいご要望でしたので、5,000万円を不動産小口化商品で節税することを提案しました。
物件はリスク分散のため、3,000万円分と2,000万円分の2物件に分けて購入。
どちらも都内の物件で圧縮率は下記の通りでした。
3,000万円 圧縮率90% 圧縮額2,700万円
2,000万円 圧縮率75% 圧縮額1,500万円

合計で約4,200万円、相続財産を圧縮できましたので、対策後の相続税の試算は920万円となり、相続税の負担を半分にすることができた事例です。

【財産5億円 推定相続人3人】
財産が約5億円で推定相続人が妻、長女、二女の3名の事例です。
対策前の財産のうち、約3億円が金融資産、約2億円が不動産、相続税の試算は1億3,110万円(配偶者軽減適用前)でした。
配偶者軽減を最大限適用した場合でも6,555万円になる計算です。
不動産小口化商品については、まずは5,000万円程度を購入して節税することをお勧めしましたが、大きく節税したいとのご要望で1億円分を購入されました。
圧縮率は下記の通りでした。
1億円 圧縮率80% 圧縮額8,000万円

約8,000万円、相続財産を圧縮できましたので、対策後の相続税の試算は配偶者軽減適用前で9,920万円、配偶者軽減を最大限適用後で4,960万円となり、相続税の負担を配偶者軽減適用前で3,190万円、配偶者軽減を最大限適用後でも1,595万円軽減することができた事例です。

【財産2億円 推定相続人2人】
財産が約2億円で推定相続人が長女と長男の2名の事例です。
対策前の財産のうち約1億5,000万円が金融資産、約5,000万円が不動産、相続税の試算は3,340万円でした。
不動産小口化商品で節税する金額は検討していただいた結果、2名で3,000万円ずつ分ける趣旨で6,000万円分を購入されました。
圧縮率は下記の通りでした。
6,000万円 圧縮率80% 圧縮額4,800万円

約4,800万円、相続財産を圧縮できましたので、対策後の相続税の試算は1,900万円となり、相続税の負担を1,440万円軽減することができた事例です。

相続税の節税効果だけでなく、相続人2名で分けやすいという点でも不動産小口化商品を選択されました。

8.不動産小口化商品の選び方と注意点

相続税の節税対策に有効な不動産小口化商品の選び方と注意点について解説します。

①目的に応じた種類を選択する

不動産小口化商品は主に任意組合型、信託受益権型、匿名組合型の3種類ありますが、この中で匿名組合型は時価評価となりますので、相続税の節税効果はありません。
相続税の節税効果があるのは任意組合型と信託受益権型になりますので、不動産小口化商品を購入する目的に応じて、種類を間違いないように注意をする必要があります。

②資産価値の下がりにくい一等地の物件を選択する

任意組合型と信託受益権型については、運用期間が10年から15年程度になることが一般的です。(中にはもっと長期間なものもあります)
そのため、運用期間が終わった時の売却時に損をしないためにも資産価値が下がりにくい物件を選ぶことが大切です。

例えば、都心の駅近(駅から徒歩5分以内など)の物件、周辺の再開発の状況、上場企業・関連企業の集積など、高い付加価値のある物件は空室が発生しても新たな入居者が速やかに見つかり、運用期間中の家賃収入も見込み通り得られやすいと思いますし、運用期間終了時の一括売却でも損をしない可能性が高くなります。

③契約内容を確認する

不動産小口化商品の中には契約で譲渡制限を設けているようなケースがあります。
通常は、運用期間中であっても持分を中途売却することができますが、中には購入から5年間は中途売却ができないなど、契約で譲渡制限が設けられていることがあります。

相続税の節税目的の場合には、短期間で売却するケース少ないと思いますので、大きな問題にはならないと思いますが、急遽資金が必要になるようなケースではすぐに売却できずに困ってしまうケースが考えられます。

④相続に詳しい専門家に相談をする

不動産小口化商品と言っても、任意組合型、信託受益権型、匿名組合型と種類が分かれていますし、不動産小口化商品を取り扱っている会社も複数あります。

相続税対策で不動産小口化商品を検討される場合には、相続税に詳しい税理士に相談をするなど、事前に相続税の試算と物件を選ぶポイントについて相談することをお勧めします。

相続税対策は、単純に節税だけを考えれば良いものとは限りません。
まずは相続税の試算を行い、現状分析をしてから節税対策、納税資金対策、遺産分割対策の優先順位を決めて対策をする必要があります。

9.専門家への相談

不動産小口化商品等について相談したい方は一般社団法人相続財産再鑑定協会にご相談ください。理事長の佐藤和基は相続税専門の税理士ですので、相続に関する知識や実績が豊富です。不動産小口化商品を活用した相続対策のご相談については、不動産特定共同事業者(10社以上を比較してご案内)のご紹介が可能です。不動産小口化商品以外についても、相続に関する相談をお受けしています。

また、納税者に損をさせない申告を信念に、これから相続税申告業務に参入される税理士向けに相続税実務研修(通信講座Web視聴)を販売しております。
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相続税の教科書(応用編)

  • 第1章.土地評価
  • 第2章.相続税還付
  • 第3章.生命保険
  • 第4章.相続手続
  • 第5章.生前対策
  • 第6章.相続と相続税
  • 第7章.山林等の処分
  • 第8章.不動産売却
  • 第9章.相続の統計情報