税務署から相続税についてのお尋ねの文書が届いた場合の対応

相続開始から半年ほど経った頃に、税務署からお尋ねの文書が送られてくることがあります。このお尋ねの文書には2種類あり、相続税がかかりそうな人には「相続についてのお知らせ」が届き、より確実に相続税がかかりそうな人には「相続税の申告等についてのご案内」が届きます。これらのお尋ねの文書には「相続税の申告要否検討表」が同封されています。ここでは、税務署からお尋ねの文書が送られてきた場合の対応等についてまとめます。

1.相続税の申告書を提出する場合

税務署から送られてくる相続税についてのお尋ねの文書には相続税の申告期限が10ヶ月以内であることから、申告時期の備忘目的としての意味合いも含まれています。そのため、相続税の申告書を提出する場合にはお尋ねの文書への回答は不要となります。しかし、相続税の申告書を提出しない場合(申告義務が不要な場合)には、この書類に回答し、相続税の申告書の提出が不要である旨を税務署に伝える必要があります。

2.相続税の申告要否検討表の記載のしかた

相続税の申告要否検討表は記載事項が下記の13項目あります。

1欄 被相続人に関する事項(住所、氏名、生年月日、亡くなった日)
2欄 被相続人の職業に関する事項(亡くなる直前とそれ以前の勤め先)
3欄 相続人に関する事項(氏名、住所、被相続人との続柄)
4欄 被相続人の不動産に関する事項(種類、所在地、面積、路線価等、倍率、評価額の概算)
5欄 被相続人の有価証券に関する事項(銘柄等、数量(株、口)金額)
6欄 被相続人の現金預貯金に関する事項(預入先、支店名、金額)
7欄 生命保険金、死亡退職金等に関する事項(保険会社等、支払会社等、金額)
8欄 その他の財産(家庭用財産、自動車、貸付金、書画、骨とうなど)に関する事項(財産の種類、数量等、金額)
9欄 相続時精算課税に関する事項(贈与を受けた人の氏名、財産の種類、金額)
10欄 3年以内の生前贈与加算に関する事項(贈与を受けた人の氏名、財産の種類、金額)
11欄 教育資金又は結婚・子育て資金の一括贈与の非課税に関する事項(贈与を受けた人の氏名、資金の種類、管理残高)
12欄 債務及び葬式費用に関する事項(借入先など債権者の住所・所在と氏名・名称、金額、葬式費用の概算)
13欄 相続税の申告書提出義務の検討(基礎控除額との比較)

上記の13項目を記載して埋めていくと相続税の申告の要否が大まかにわかります。相続税の申告要否検討表の金額を記載して、明らかに基礎控除額を下回る場合には一番下の日付、住所、氏名、電話番号を記載して税務署へ返送します。なお、基礎控除額を上回る場合や金額がぎりぎりで判断が難しい場合には税理士に依頼するなど、正確な評価と計算をした方が良いでしょう。

3.相続税の申告要否検討表の作成に必要な資料

相続税の申告要否検討表を作成する際に必要な資料(確認に使う資料)をご紹介します。
※申告義務がない場合の簡易的な評価を前提としています。

なお、下記の必要な資料はあくまでも相続税の申告要否検討表を記載する際に確認をするもので、相続税の申告要否検討表に添付して提出する必要はありません。税務署から問合せが来た時に回答できるように保管しておくと良いでしょう。

①戸籍謄本

相続人を特定する際には戸籍謄本で確認します。戸籍謄本は銀行手続き、不動産の相続登記などでも使用するため、入手した方が良いでしょう。なお、戸籍謄本の取り方について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

②不動産評価の必要資料

不動産評価には固定資産税の課税明細書、路線価図又は倍率評価が必要になります。固定資産税の課税明細書には、所有している土地、家屋の所在地、面積、評価額等が記載されています。

土地は地域に応じて路線価区域と倍率区域に分かれており、路線価区域に該当する場合には、路線価図で路線価を確認して「路線価×面積」で評価します。倍率区域に該当する場合には倍率を確認して「固定資産税評価額×倍率」で評価します。路線価及び倍率は国税庁のホームページで確認できます。

家屋は固定資産税の課税明細書に記載されている評価額がそのまま評価額となります。
※家屋の評価額は固定資産税評価額×1.0のためです。

なお、共有名義や区分所有マンションがある場合には持ち分や敷地権割合を確認するために全部事項証明書で被相続人の持ち分や敷地権割合を確認します。

③金融資産の評価の必要資料

有価証券については、証券会社から送られてくる取引残高報告書等で株数(口数)を確認し、相続開始日の株価等を調べて評価します。株価はヤフーファイナンスなどで調べることができます。

なお、投資信託など評価額の算定が難しい場合には、証券会社に残高証明書の発行依頼と共に相続税評価額の算定も依頼できます。
※相続税評価額は参考情報等で出してもらえます。

預貯金については、通帳から相続開始日の残高を確認します。

④生命保険金等及び死亡退職金等の必要資料

死亡保険金等及び死亡退職金等については、生命保険会社や会社等が発行する支払明細書等で金額を確認します。

⑤その他財産の必要資料

その他の財産についても評価額を確認します。例えば自動車の場合には、車検証等を用意して中古車販売会社等の査定価格を調べます。

⑥贈与税の申告書及び贈与契約書

相続時精算課税に関する事項や3年以内の生前贈与加算に関する事項は贈与税の申告書や贈与契約書等で確認します。
※贈与税の申告書を紛失している場合には、税務署に申告書の開示請求をすることで内容を確認できます。

なお、3年以内の生前贈与加算に関する事項は贈与税の申告の有無とは関係なく、仮に非課税枠の110万円以下の贈与であっても記載します。

⑦管理残高の確認資料

教育資金又は結婚・子育て資金の一括贈与の非課税の適用を受けた場合には、信託している金融機関から送られてくる管理報告書で管理残高を確認します。

⑧債務の必要資料

借入金については、借入返済予定表で相続開始日の借入残高を確認します。他にも固定資産税、住民税等の税金や医療費等で相続開始後に支払ったものは領収書で日付(相続開始後のもの)と金額を確認します。

⑨葬式費用の必要資料

領収書で金額を確認します。なお、お布施や心付けなどの領収書がないものも葬式費用に含めることができるため、日付、支払先、金額、項目をメモして残しておきます。

4.相続税の申告要否検討表を提出しない場合のデメリット

相続税の申告要否検討表への回答は任意であるため、回答しなかった場合の罰則はありません。しかし、回答しなかった場合には下記のリスクが考えられます。

〇申告要否の検討を行わず、申告期限後に申告義務があると判明した場合、無申告加算税や延滞税が課税される。
〇税務調査が行われるリスクが高くなる。

5.専門家への相談

相続税の申告要否検討表について相談したい方は一般社団法人相続財産再鑑定協会にご相談ください。理事長の佐藤和基は相続税専門の税理士ですので、相続に関する知識や実績が豊富です。

相続税が発生しない方については相続に関する様々な専門家(弁護士、司法書士、行政書士、不動産鑑定士、不動産の売買、生命保険、遺品整理、自動車の買取、ゴルフ会員権の売買など)と提携していますので、必要に応じて適切な専門家をご紹介可能です。

また、納税者に損をさせない申告を信念に、これから相続税申告業務に参入される税理士向けに相続税実務研修(通信講座Web視聴)を販売しております。
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