アパート経営で相続税対策|節税の仕組みを詳しく解説

不動産を活用した節税対策として、アパート建築を検討している方が多いと思います。
特に地主の方で駐車場や更地がある場合は、先祖代々引き継いだ土地を守るためにアパート建築をして節税する方も多いでしょう。
ここでは、アパート経営がなぜ節税になるのか評価の仕組みなどを解説します。

1.不動産の相続税評価額は時価よりも安く計算される

アパート建築が節税になる理由として、不動産の相続税評価額が時価よりも低く計算される点があります。
土地の相続税評価額については、時価の80%程度となります。
さらにアパート建築をして賃貸した場合には、貸家建付地として評価額を下げることができます。
貸家建付地の評価は下記の算式で計算します。

【算式】

自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=貸家建付地の評価額

※借地権割合は路線価図又は倍率表で確認できます。
 借家権割合は全国一律30%です。

住宅街ですと借地権割合は60%程度になることが多いため、仮に借地権割合が60%の場合には、自用地評価額から18%評価額を下げることができます。

次に家屋の相続税評価額ついては、固定資産税評価額となりますが、固定資産税評価額は家屋の建築費の60%程度になります。
さらに賃貸している場合には、貸家として借家権30%を減額することができます。

具体例を紹介します。
前提条件は以下の通りとします。
〇更地の土地で時価1億円(相続税評価額8,000万円)を所有
〇上記の更地に建築費用1億円で賃貸アパートを建築
〇建築したアパートの固定資産税評価額は6,000万円
〇借地権割合は60%
〇空室はゼロ

上記の前提で具体的に計算をすると以下の通りとなります。

土地の相続税評価額
8,000万円×(1-60%×30%×100%)=6,560万円

家屋の相続税評価額
6,000万円×(1-30%×100%)=4,200万円

圧縮効果としては、土地が8,000万円から6,560万円の評価額になり、建築費用1億円は4,200万円の評価額になるため、トータルで7,240万円が財産から圧縮されることになります。

例えば相続税の税率が30%の場合には2,172万円の節税効果となります。
仮に相続税の税率が最低の10%の場合でも724万円の節税効果があるため、アパート建築による節税効果は大きいと言えるでしょう。

2.小規模宅地等の特例を適用するとさらに節税

小規模宅地等の特例は、相続をした土地について一定の要件を満たす場合には、土地の評価額から80%又は50%の減額をすることができる特例となります。
アパート経営などの賃貸物件については、200㎡まで50%減額することができます。
なお、自宅については330㎡まで80%の減額、不動産賃貸以外の事業用の土地については400㎡まで80%の減額ができます。

そのため、地主のケースですとアパート建築をした土地以外にも土地を所有しており、自宅の面積も広い方が多いと思いますので、基本的にはアパート建築により追加で小規模宅地等の特例を適用できるケースは少ないと思います。
他に小規模宅地等の特例を適用できる土地がない場合や他の土地の減額の単価が低い時に適用することになります。

なお、アパート建築をした時に小規模宅地等の特例を適用する場合には、3年以内貸付宅地等に該当しないよう気を付ける必要があります。
3年以内貸付宅地等とは、亡くなる前3年以内に新たに貸付事業を行った場合には、小規模宅地等の特例が適用できないルールとなります。
※亡くなる前3年以上、不動産賃貸業を事業的規模で行っている人であれば3年以内の取得でも小規模宅地等の特例は適用できます。

小規模宅地等の特例は、金額ではなく「限度面積」が決まっているため、節税効果を高くする場合には、都心部の評価額が高いタワーマンションや優良物件の不動産小口化商品の購入がお勧めです。

タワーマンションや不動産小口化商品について詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。

3.アパートローンを組んで自己資金を残す

アパート建築による節税を実行する場合には、多額の建築費用が必要になってきます。
よく「アパートローンを組むと相続税の節税になる」という説明をする方がいますが、アパートローンに節税効果は全くありません。
1億円の借金をする場合には、1億円の現金(資産)が増えますが、借金(債務)も1億円増えるため、差引純資産はゼロとなります。
ではなぜ「アパートローンを組むと相続税の節税になる」と説明されるのか解説すると、アパートローンで借りた現金でアパート建築をして、資産が現金からアパートに変わるからです。

賃貸アパートは上記1. 不動産の相続税評価額は時価よりも安く計算されるで解説した通り、相続税評価額の圧縮に繋がるため、総合的に見て節税に繋がります。
そのため、自己資金でアパート建築をした場合とアパートローンを組んだ場合の節税効果は変わりません。

ただし、地主の悩みは「相続税の節税」だけではなく、「納税資金が足りない」という方も多くいます。
財産の大半が不動産で預貯金は資産の1割程度しかないという方も多いと思います。
そのため、納税資金を確保する意味ではアパートローンを組んでアパート建築をすることで、相続税の節税と納税資金の確保の2つの側面から対策を実行することができます。

4.アパート経営のメリットとデメリット

アパート経営には節税等のメリットがありますが、逆にデメリットもあります。
ここでは、アパート経営のメリットとデメリットをまとめます。

アパート経営のメリット

アパート経営のメリットをまとめると以下の3つが考えられます。
〇相続税の節税対策になる
〇家賃収入を得られる
〇現金よりもインフレに強い

相続税の節税対策は上記で解説した通りですが、家賃収入を得ることができるため、安定した収入となります。
また、インフレ時には現金の価値が下がってしまいますが、不動産はインフレの影響を受けにくく、資産を守ることに繋がります。

アパート経営のデメリット

アパート経営のデメリットをまとめると以下の3つが考えられます。
〇遺産分割がしにくい(相続人間のトラブル)
〇空室リスクや修繕費等の費用負担の発生
〇売却がしにくい

相続が発生した際に現金については均等に分けたり、遺産分割の割合の調整がしやすいですが、不動産については現金のように簡単に分けることができません。
中には兄弟仲良く共有で相続をする方もいますが、共有名義の場合には売却や修繕の際に共有者全員の同意が必要になってしまいます。
また、共有者に相続が発生した場合には、共有者の相続人と共有することになり、関係者が増えてくるとトラブルの発生リスクが高くなります。

アパートの築年数が経過すると修繕が必要になったり、空室が出る可能性も高くなってきます。
空室が出ると相続税評価額も賃貸割合を考慮して計算するため、相続税の負担が高くなってしまいます。
また、アパートを売却する場合、築年数が浅く空室も少なければ投資用として売却がしやすいと思いますが、築年数が経っていて空室も多い場合は買い手が少なく、売却までに時間がかかってしまいます。

5.アパート経営よりも手軽な不動産小口化商品

アパート建築は節税効果も高く、家賃収入も得られるため相続対策として有効ですが、多額の資金が必要になってきます。
地主など更地を所有している方の場合には、土地の購入が不要なため建築資金のみでアパート経営を始めることができますが、土地を所有していない方は土地の購入も必要になるため、より多くの資金が必要になってきます。
資金面でアパート経営が難しい方には不動産小口化商品がお勧めです。
不動産小口化商品は融資が使えないなどのデメリットもありますが、1口100万円程度で始めることができます。
※会社によって最低500万円又は1,000万円などの下限のルールがあります。

不動産小口化商品のメリットとデメリットをまとめると以下の通りとなります。

メリット
〇少ない資金で手軽に購入できる
〇優良物件に投資できる
〇相続税の節税対策に活用できる
〇自分で不動産を管理する必要がない

デメリット
〇利回りが低くなる
〇融資が使えないため自己資金が必要になる
〇元本保証、賃料収入の保証がない
〇商品数が少ない

不動産小口化商品について詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。

6.専門家への相談

アパート経営や不動産小口化商品を活用した節税について相談したい方は一般社団法人相続財産再鑑定協会にご相談ください。理事長の佐藤和基は相続税専門の税理士ですので、相続に関する知識や実績が豊富です。アパート経営等を検討している方にはハウスメーカー等の不動産会社のご紹介も可能です。アパート経営以外についても、相続に関する相談をお受けしています。

また、納税者に損をさせない申告を信念に、これから相続税申告業務に参入される税理士向けに相続税実務研修(通信講座Web視聴)を販売しております。
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