アパート経営で相続税対策|節税の仕組みを詳しく解説

不動産を活用した節税対策として、アパート建築を検討している方が多いと思います。
特に地主の方で駐車場や更地がある場合は、先祖代々引き継いだ土地を守るためにアパート建築をして節税する方も多いでしょう。
ここでは、アパート経営がなぜ節税になるのか評価の仕組みなどを解説します。
また、一般社団法人相続財産再鑑定協会及び佐藤和基税理士事務所では複数のハウスメーカーと提携していますので、アパート建築を検討している方に対して、ハウスメーカーのご紹介も行っています。

令和7年12月19日に令和8年度税制改正大綱が発表されましたので、改正による変更点と対策についても解説します。

1.不動産の相続税評価額は時価よりも安く計算される

アパート建築が節税になる理由として、不動産の相続税評価額が時価よりも低く計算される点があります。
土地の相続税評価額については、時価の80%程度となります。
さらにアパート建築をして賃貸した場合には、貸家建付地として評価額を下げることができます。
貸家建付地の評価は下記の算式で計算します。

【算式】

自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=貸家建付地の評価額

※借地権割合は路線価図又は倍率表で確認できます。
 借家権割合は全国一律30%です。

住宅街ですと借地権割合は60%程度になることが多いため、仮に借地権割合が60%の場合には、自用地評価額から18%評価額を下げることができます。

次に家屋の相続税評価額ついては、固定資産税評価額となりますが、固定資産税評価額は家屋の建築費の60%程度になります。
さらに賃貸している場合には、貸家として借家権30%を減額することができます。

具体例を紹介します。
前提条件は以下の通りとします。
〇更地の土地で時価1億円(相続税評価額8,000万円)を所有
〇上記の更地に建築費用1億円で賃貸アパートを建築
〇建築したアパートの固定資産税評価額は6,000万円
〇借地権割合は60%
〇空室はゼロ

上記の前提で具体的に計算をすると以下の通りとなります。

土地の相続税評価額
8,000万円×(1-60%×30%×100%)=6,560万円

家屋の相続税評価額
6,000万円×(1-30%×100%)=4,200万円

圧縮効果としては、土地が8,000万円から6,560万円の評価額になり、建築費用1億円は4,200万円の評価額になるため、トータルで7,240万円が財産から圧縮されることになります。

例えば相続税の税率が30%の場合には2,172万円の節税効果となります。
仮に相続税の税率が最低の10%の場合でも724万円の節税効果があるため、アパート建築による節税効果は大きいと言えるでしょう。

2.小規模宅地等の特例を適用するとさらに節税

小規模宅地等の特例は、相続をした土地について一定の要件を満たす場合には、土地の評価額から80%又は50%の減額をすることができる特例となります。
アパート経営などの賃貸物件については、200㎡まで50%減額することができます。
なお、自宅については330㎡まで80%の減額、不動産賃貸以外の事業用の土地については400㎡まで80%の減額ができます。

そのため、地主のケースですとアパート建築をした土地以外にも土地を所有しており、自宅の面積も広い方が多いと思いますので、基本的にはアパート建築により追加で小規模宅地等の特例を適用できるケースは少ないと思います。
他に小規模宅地等の特例を適用できる土地がない場合や他の土地の減額の単価が低い時に適用することになります。

なお、アパート建築をした時に小規模宅地等の特例を適用する場合には、3年以内貸付宅地等に該当しないよう気を付ける必要があります。
3年以内貸付宅地等とは、亡くなる前3年以内に新たに貸付事業を行った場合には、小規模宅地等の特例が適用できないルールとなります。
※亡くなる前3年以上、不動産賃貸業を事業的規模で行っている人であれば3年以内の取得でも小規模宅地等の特例は適用できます。

小規模宅地等の特例は、金額ではなく「限度面積」が決まっているため、節税効果を高くする場合には、都心部の評価額が高いタワーマンションや優良物件の不動産小口化商品の購入がお勧めです。

タワーマンションや不動産小口化商品について詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。

3.アパートローンを組んで自己資金を残す

アパート建築による節税を実行する場合には、多額の建築費用が必要になってきます。
よく「アパートローンを組むと相続税の節税になる」という説明をする方がいますが、アパートローンに節税効果は全くありません。
1億円の借金をする場合には、1億円の現金(資産)が増えますが、借金(債務)も1億円増えるため、差引純資産はゼロとなります。
ではなぜ「アパートローンを組むと相続税の節税になる」と説明されるのか解説すると、アパートローンで借りた現金でアパート建築をして、資産が現金からアパートに変わるからです。

賃貸アパートは上記1. 不動産の相続税評価額は時価よりも安く計算されるで解説した通り、相続税評価額の圧縮に繋がるため、総合的に見て節税に繋がります。
そのため、自己資金でアパート建築をした場合とアパートローンを組んだ場合の節税効果は変わりません。

ただし、地主の悩みは「相続税の節税」だけではなく、「納税資金が足りない」という方も多くいます。
財産の大半が不動産で預貯金は資産の1割程度しかないという方も多いと思います。
そのため、納税資金を確保する意味ではアパートローンを組んでアパート建築をすることで、相続税の節税と納税資金の確保の2つの側面から対策を実行することができます。

4.令和8年度税制改正による変更点

被相続人等が課税時期(相続、遺贈又は贈与)前5年以内に取得又は新築した一定の貸付用不動産は、「通常の取引価額」で評価をすることになりました。

この「通常の取引価額」は、課税上の弊害がない限り、「取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の80%」で評価することができます。

地価の変動等をどのように考慮するのかは、まだ明確になっていませんが、例えば「取得した年の路線価」と「課税時期の路線価」を比較して、地価の変動率を計算する方法などが考えられます。

この改正は令和9年1月1日以後に相続等により取得をする財産の評価に適用されます。

ただし、この改正は、この改正を通達に定める日(まだいつになるか明確ではありませんが、令和8年の夏から秋頃ではないかと思います)までに、被相続人等がその所有する土地(この改正を通達に定める日の5年前から所有しているものに限ります)に新築をした家屋(建築中のものを含みます)には適用しません。

つまり、少なくても現時点で5年以上所有している土地がある場合には、通達が公表される前に新築をすることで、この改正の適用を回避することができます。
そのため、駆け込みでの建築が増える可能性があります。

5.これから貸付用不動産を活用して節税しようとしていた方の対策

今回の税制改正は、相続税対策を企図した相続直前での駆け込み取得等が問題視されて評価方法が変更されることになりました。

不動産小口化商品については、取得時期に関わらず令和9年1月1日以降は節税効果がなくなってしまいますが、貸付用不動産については、課税時期前5年以内の取得又は新築に限られていますので、取得又は新築から5年経過することで、従来の評価方法で評価することができます。
そのため、今後はより早期に対策をすることが求められます。

亡くなる直前での対策は規制されることになりますので、今後は長期所有を想定して利回りなど、収益性を重視した取引が増えると思います。

なお、既に貸付用不動産を取得していて、5年以内に相続の発生する可能性のある方については、令和8年12月31日までに生前贈与をすることで、「贈与時の評価額」で移転させることができます。

暦年課税では贈与税負担が大きくなってしまうため、基本的には相続時精算課税制度との組合せをすることになると思います。

相続時精算課税制度について詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。

貸付用不動産の対策については、貸付用不動産の金額、依頼者の年齢等によって、適切な対策方法は異なりますので、相続税専門の税理士など、詳しい専門家に相談をする必要があります。

6.アパート経営のメリットとデメリット

アパート経営には節税等のメリットがありますが、逆にデメリットもあります。
ここでは、アパート経営のメリットとデメリットをまとめます。

アパート経営のメリット

アパート経営のメリットをまとめると以下の3つが考えられます。
〇相続税の節税対策になる
〇家賃収入を得られる
〇現金よりもインフレに強い

相続税の節税対策は上記で解説した通りですが、家賃収入を得ることができるため、安定した収入となります。
また、インフレ時には現金の価値が下がってしまいますが、不動産はインフレの影響を受けにくく、資産を守ることに繋がります。

アパート経営のデメリット

アパート経営のデメリットをまとめると以下の3つが考えられます。
〇遺産分割がしにくい(相続人間のトラブル)
〇空室リスクや修繕費等の費用負担の発生
〇売却がしにくい

相続が発生した際に現金については均等に分けたり、遺産分割の割合の調整がしやすいですが、不動産については現金のように簡単に分けることができません。
中には兄弟仲良く共有で相続をする方もいますが、共有名義の場合には売却や修繕の際に共有者全員の同意が必要になってしまいます。
また、共有者に相続が発生した場合には、共有者の相続人と共有することになり、関係者が増えてくるとトラブルの発生リスクが高くなります。

アパートの築年数が経過すると修繕が必要になったり、空室が出る可能性も高くなってきます。
空室が出ると相続税評価額も賃貸割合を考慮して計算するため、相続税の負担が高くなってしまいます。
また、アパートを売却する場合、築年数が浅く空室も少なければ投資用として売却がしやすいと思いますが、築年数が経っていて空室も多い場合は買い手が少なく、売却までに時間がかかってしまいます。

7.アパート経営よりも手軽な不動産小口化商品

アパート建築は節税効果も高く、家賃収入も得られるため相続対策として有効ですが、多額の資金が必要になってきます。
地主など更地を所有している方の場合には、土地の購入が不要なため建築資金のみでアパート経営を始めることができますが、土地を所有していない方は土地の購入も必要になるため、より多くの資金が必要になってきます。
資金面でアパート経営が難しい方には不動産小口化商品がお勧めです。
不動産小口化商品は融資が使えないなどのデメリットもありますが、1口100万円程度で始めることができます。
※会社によって最低500万円又は1,000万円などの下限のルールがあります。

不動産小口化商品のメリットとデメリットをまとめると以下の通りとなります。

メリット
〇少ない資金で手軽に購入できる
〇優良物件に投資できる
〇相続税の節税対策に活用できる
〇自分で不動産を管理する必要がない

デメリット
〇利回りが低くなる
〇融資が使えないため自己資金が必要になる
〇元本保証、賃料収入の保証がない
〇商品数が少ない

不動産小口化商品について詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。

令和7年12月19日に令和8年度税制改正大綱が公表され、不動産小口化商品の評価方法が変更されることになりました。
適用時期は令和9年1月1日以後に相続等により取得をする財産の評価に適用されます。

不動産小口化商品の評価方法の変更内容について、詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

8.アパート建築や不動産小口化商品を活用した節税の相談

アパート経営や不動産小口化商品を活用した節税について相談したい方は一般社団法人相続財産再鑑定協会にご相談ください。
理事長の佐藤和基は相続税専門の税理士ですので、相続に関する知識や実績が豊富です。

ハウスメーカー等の不動産会社との提携もありますので、複数社のプランを比較することも可能です。
相続税の試算、収益物件の購入時期や新築開始時期による改正の適用有無、節税効果のシミュレーションなど、アドバイスさせていただきます。

令和8年度税制改正の内容を踏まえて、貸付用不動産に関するご相談は初回の相談料を無料とさせていただきます。

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相続税の教科書(応用編)

  • 第1章.土地評価
  • 第2章.相続税還付
  • 第3章.生命保険
  • 第4章.相続手続
  • 第5章.生前対策
  • 第6章.相続と相続税
  • 第7章.山林等の処分
  • 第8章.不動産売却
  • 第9章.相続の統計情報
  • 第10章.税制改正大綱