不動産小口化商品で相続税の節税対策をする方法(任意組合型)

相続税の節税方法には生前贈与の活用、生命保険の活用、不動産の活用などがあります。不動産での節税には、アパート建築、小規模宅地等の特例の適用などがありますが、少額に小口化した商品である不動産小口化商品の活用も節税に有効です。ここでは、不動産小口化商品のうち、不動産特定共同事業法に基づく任意組合型についてまとめます。
※他には信託受益権型、賃貸型、匿名組合型があります。相続税の節税効果があるのは任意組合型と信託受益権型、賃貸型になりますが、賃貸型は実務上ほとんどありませんので、実際に活用されているのは任意組合型と信託受益権型になります。

令和7年12月19日に令和8年度税制改正大綱が発表されましたので、改正による変更点と対策についても解説します。

1.不動産小口化商品とは

不動産小口化商品とは、特定の不動産を1口100万円など、小口化して販売している商品で、賃料収入等を所有口数により出資者に分配する商品です。都市部の優良不動産を購入するには多額の資金が必要になりますが、不動産小口化商品であれば、少額から投資が可能になります。

例えば10億円の不動産を1,000口で募集する場合、1口100万円で出資することができます。なお、任意組合型は不動産を管理する業者と投資家との間で任意組合契約を締結する形で行います。投資家は出資金額に応じて不動産の持ち分を有することになります。

2.不動産小口化商品を購入するメリット

不動産小口化商品を購入するメリットとしては下記のようなものがあります。

少ない資金で手軽に購入できる

一般的な不動産投資では土地の購入や建物の建築等で数千万円の資金が必要になってきますが、不動産小口化商品の場合には1口100万円程度の資金で不動産投資が可能です。

優良物件に投資ができる

不動産小口化商品の物件は利便性が高く好立地にある物件や首都圏の一等地にある物件など高額な優良物件が多く、通常であれば数億円から数十億円単位の本来であれば手が出ないようなものも多くあります。しかし、不動産小口化商品であれば、このような本来であれば手が出ないような優良物件の持ち分を一部所有することができます。

相続税の節税対策に活用できる

不動産を相続する場合は、一般的に時価の80%程度の評価額になります。不動産小口化商品の場合も一般的な不動産の持ち分所有の評価と同様に評価しますが、持ち分地積が小さく計算されることから圧縮率は高い傾向にあります。さらに賃貸物件については、借地権割合に応じて土地の評価額は約20%前後の減額、建物の評価額は30%の減額がされます。
不動産小口化商品の物件にもよりますが、ここまでの減額で70%から80%程度評価額が下がるものが多くあります。また、賃貸物件は小規模宅地等の特例の適用も可能ですので、さらに50%の減額が可能です。

小規模宅地等の特例は限度面積があるため、自宅等の他に適用可能な物件がある場合は適用できないケースもありますが、不動産小口化商品の物件は好立地な優良物件が多く、路線価の単価も高いものが多いと思いますので、先に不動産小口化商品の物件から適用し、残りの面積について自宅等に適用する方が有利になる可能性もあります。なお、不動産小口化商品は少額から投資可能なため、複数の物件を所有することで遺産分割対策としても分けやすくすることもできます。

自分で不動産を管理する必要がない

不動産小口化商品は、業者が任意組合の代表として投資不動産の運営、管理を行いますので、投資家は物件を維持管理する手間がかかりません。

3.不動産小口化商品を購入するデメリット

利回りが低くなる

不動産小口化商品は、優良物件に投資ができ業者が運営、管理をするため手間もかかりませんが、その分、対価として業者の取り分があるため、得られる収入は低くなります。

融資が使えないため自己資金が必要になる

一般的な単独所有の不動産であれば、その不動産を担保に融資を受けることが可能ですが、不動産小口化商品の場合は、共同所有のため、不動産を担保に融資を受けることができません。そのため、自己資金での投資することになります。

元本保証、賃料収入の保証がない

不動産小口化商品は、運用期間中に運用利益を分配し、一定期間運用後、対象不動産を売却して売却益を分配する仕組みとなっています。そのため、空室の状態が続いてしまう場合や、不動産の価値が下がってしまった場合には元本割れとなってしまうリスクがあります。

商品数が少ない(申し込みの倍率が高い)

不動産小口化商品は、一般的な不動産と比較すると商品数が少なく、不動産小口化商品を取り扱いできる業者も不動産特定共同事業法の要件を満たし許可を受けた業者となります。そのため、購入したい希望者よりも商品数が少なく投資したくてもすぐに小口化商品が見つからない可能性があります。

4.生前贈与との組合せ

不動産小口化商品の相続税評価額の圧縮率は80%程度になるケースが多く、単体でも大きな節税効果がありますが、生前贈与と組合せることで、さらに大きく節税することも可能です。
不動産小口化商品の相続税評価額の圧縮率が80%の場合で、生前贈与と組合せた場合の節税金額を計算します。
なお、贈与税の税率は、直系尊属から18歳以上の者への贈与の場合とそれ以外の場合で異なるため、ここでは、直系尊属から18歳以上の者への贈与(つまり親から子に対する贈与や親から孫に対する贈与)と仮定して計算します。
【不動産小口化商品の圧縮率が80%の場合の贈与税】

  現金贈与 不動産小口化商品 節税金額
500万円贈与 485,000円 0円 485,000円
1,000万円贈与 1,770,000円 90,000円 1,680,000円
1,500万円贈与 3,660,000円 190,000円 3,470,000円
2,000万円贈与 5,855,000円 335,000円 5,520,000円
2,500万円贈与 8,105,000円 485,000円 7,620,000円
3,000万円贈与 10,355,000円 680,000円 9,675,000円

上記の表の通りですが、500万円を現金で贈与する場合は、贈与税の負担は485,000円となりますが、不動産小口化商品を購入して贈与する場合は、相続税評価額が100万円になることから、贈与税の基礎控除額110万円を下回ることになり贈与税負担はゼロになります。

金額が大きくなるほど贈与税の負担も大きくなるため、多額の贈与をする時は、不動産小口化商品を活用するメリットも大きくなります。

5.令和8年度税制改正大綱による変更点

不動産小口化商品のうち、任意組合型、賃貸型又は信託受益権型の貸付用不動産については、その取得の時期にかかわらず、相続開始時又は贈与時における通常の取引価格に相当する金額によって評価することになりました。
※賃貸型は実務上、ほとんどありませんので、以下賃貸型は割愛します。

この「通常の取引価格」とは、課税上の弊害がない限り、次の①、②又は③に掲げる価格等を参酌して求めた金額によって表します。
①出資者等の求めに応じて事業者等が示した適正な処分価格、買取価格等
②事業者等が把握している適正な売買実例価額
③定期報告書等に記載された不動産の価格等
ただし、上記①、②又は③に該当するものがないと認められる場合には、貸付用不動産の評価方法準じて取得価額をベースに80%で評価します。

この改正は令和9年1月1日以後に相続等により取得をする財産の評価に適用されます。

6.改正による規制の回避方法

不動産小口化商品のうち、任意組合型又は信託受益権型を購入している方については、相続開始や贈与のタイミングによって評価方法が異なることになります。
改正の適用時期が令和9年1月1日以後の相続、遺贈又は贈与による取得になりますので、適用時期開始前の令和8年12月31日までに相続、遺贈又は贈与により取得することで、改正前の評価額による引継ぎが可能となります。

そのため、事前の対策としては、令和8年12月31日までに生前贈与する方法が考えられます。
生前贈与には暦年課税と相続時精算課税制度の2種類あります。

どちらを使った方が良いのかは、不動産小口化商品の購入金額の大小や贈与者の年齢等によっても異なりますので、生前贈与を実行する場合には、必ず相続税専門の税理士など、詳しい専門家に相談する必要があります。

また、これから不動産小口化商品の購入を検討している方についても考え方は同様です。
不動産小口化商品の購入後、令和8年12月31日までに生前贈与をすることで、「贈与時の時価」で評価をすることができます。
つまり「改正前の従来の評価方法」で評価をすることができます。
多額の贈与をする場合には、相続時精算課税制度を利用することで、大幅な節税も可能ですが、行き過ぎた節税(基本的には節税金額で億単位)については、財産評価基本通達6項による否認リスクがありますので、実行する場合には、必ず相続税専門の税理士に相談することをお勧めします。
※財産評価基本通達6項は「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の評価は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」と定められています。
曖昧な表現のため、適用要件がわかりにくいですが、「行き過ぎた節税対策」に適用されます。

7.専門家への相談

一般社団法人相続財産再鑑定協会及び佐藤和基税理士事務所では、当事務所の紹介で不動産小口化商品を購入した方については、生前贈与をするべきか、生前贈与をする場合も暦年課税と相続時精算課税制度のどちらが良いのかシミュレーションを含めて無料対応させていただきます。

当事務所以外の税理士や金融機関の紹介で購入した方については、まずは紹介者に相談をすることをお勧めしますが、当事務所でも相談対応は可能です。

また、これから不動産小口化商品を活用した節税を検討している方についても、一般社団法人相続財産再鑑定協会及び佐藤和基税理士事務所にご相談ください。
代表の佐藤和基は相続税専門の税理士ですので、相続に関する知識や実績が豊富です。
不動産小口化商品を扱う会社は13社と提携していますので、各社の商品を比較してご紹介可能ですし、生前贈与(暦年課税と相続時精算課税制度の判断含む)のシミュレーションや財産評価基本通達6項の否認リスクの有無など、アドバイスさせていただきます。

提携先が多いことで、不動産小口化商品に関する各種の最新情報(物件情報に限らず、税制改正等も含む各種の情報)が常に入ってきます。

令和8年度税制改正の内容を踏まえて、不動産小口化商品に関するご相談は初回の相談料を無料とさせていただきます。

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相続税の教科書(応用編)

  • 第1章.土地評価
  • 第2章.相続税還付
  • 第3章.生命保険
  • 第4章.相続手続
  • 第5章.生前対策
  • 第6章.相続と相続税
  • 第7章.山林等の処分
  • 第8章.不動産売却
  • 第9章.相続の統計情報
  • 第10章.税制改正大綱