不動産小口化商品で相続税の節税対策をする方法(任意組合型)

相続税の節税方法には生前贈与の活用、生命保険の活用、不動産の活用などがあります。不動産での節税には、アパート建築、小規模宅地等の特例の適用などがありますが、少額に小口化した商品である不動産小口化商品の活用も節税に有効です。ここでは、不動産小口化商品のうち、不動産特定共同事業法に基づく任意組合型についてまとめます。※他には信託受益権型、賃貸型、匿名組合型があります。

1.不動産小口化商品とは

不動産小口化商品とは、特定の不動産を1口100万円など、小口化して販売している商品で、賃料収入等を所有口数により出資者に分配する商品です。都市部の優良不動産を購入するには多額の資金が必要になりますが、不動産小口化商品であれば、少額から投資が可能になります。

例えば10億円の不動産を1,000口で募集する場合、1口100万円で出資することができます。なお、任意組合型は不動産を管理する業者と投資家との間で任意組合契約を締結する形で行います。投資家は出資金額に応じて不動産の持ち分を有することになります。

2.不動産小口化商品を購入するメリット

不動産小口化商品を購入するメリットとしては下記のようなものがあります。

少ない資金で手軽に購入できる

一般的な不動産投資では土地の購入や建物の建築等で数千万円の資金が必要になってきますが、不動産小口化商品の場合には1口100万円程度の資金で不動産投資が可能です。

優良物件に投資ができる

不動産小口化商品の物件は利便性が高く好立地にある物件や首都圏の一等地にある物件など高額な優良物件が多く、通常であれば数億円から数十億円単位の本来であれば手が出ないようなものも多くあります。しかし、不動産小口化商品であれば、このような本来であれば手が出ないような優良物件の持ち分を一部所有することができます。

相続税の節税対策に活用できる

不動産を相続する場合は、一般的に時価の80%程度の評価額になります。不動産小口化商品の場合も一般的な不動産の持ち分所有の評価と同様に評価しますが、持ち分地積が小さく計算されることから圧縮率は高い傾向にあります。さらに賃貸物件については、借地権割合に応じて土地の評価額は約20%前後の減額、建物の評価額は30%の減額がされます。
不動産小口化商品の物件にもよりますが、ここまでの減額で70%から80%程度評価額が下がるものが多くあります。また、賃貸物件は小規模宅地等の特例の適用も可能ですので、さらに50%の減額が可能です。

小規模宅地等の特例は限度面積があるため、自宅等の他に適用可能な物件がある場合は適用できないケースもありますが、不動産小口化商品の物件は好立地な優良物件が多く、路線価の単価も高いものが多いと思いますので、先に不動産小口化商品の物件から適用し、残りの面積について自宅等に適用する方が有利になる可能性もあります。なお、不動産小口化商品は少額から投資可能なため、複数の物件を所有することで遺産分割対策としても分けやすくすることもできます。

自分で不動産を管理する必要がない

不動産小口化商品は、業者が任意組合の代表として投資不動産の運営、管理を行いますので、投資家は物件を維持管理する手間がかかりません。

3.不動産小口化商品を購入するデメリット

利回りが低くなる

不動産小口化商品は、優良物件に投資ができ業者が運営、管理をするため手間もかかりませんが、その分、対価として業者の取り分があるため、得られる収入は低くなります。

融資が使えないため自己資金が必要になる

一般的な単独所有の不動産であれば、その不動産を担保に融資を受けることが可能ですが、不動産小口化商品の場合は、共同所有のため、不動産を担保に融資を受けることができません。そのため、自己資金での投資することになります。

元本保証、賃料収入の保証がない

不動産小口化商品は、運用期間中に運用利益を分配し、一定期間運用後、対象不動産を売却して売却益を分配する仕組みとなっています。そのため、空室の状態が続いてしまう場合や、不動産の価値が下がってしまった場合には元本割れとなってしまうリスクがあります。

商品数が少ない(申し込みの倍率が高い)

不動産小口化商品は、一般的な不動産と比較すると商品数が少なく、不動産小口化商品を取り扱いできる業者も不動産特定共同事業法の要件を満たし許可を受けた業者となります。そのため、購入したい希望者よりも商品数が少なく投資したくてもすぐに小口化商品が見つからない可能性があります。

4.生前贈与との組合せ

不動産小口化商品の相続税評価額の圧縮率は80%程度になるケースが多く、単体でも大きな節税効果がありますが、生前贈与と組合せることで、さらに大きく節税することも可能です。
不動産小口化商品の相続税評価額の圧縮率が80%の場合で、生前贈与と組合せた場合の節税金額を計算します。
なお、贈与税の税率は、直系尊属から18歳以上の者への贈与の場合とそれ以外の場合で異なるため、ここでは、直系尊属から18歳以上の者への贈与(つまり親から子に対する贈与や親から孫に対する贈与)と仮定して計算します。
【不動産小口化商品の圧縮率が80%の場合の贈与税】

  現金贈与 不動産小口化商品 節税金額
500万円贈与 485,000円 0円 485,000円
1,000万円贈与 1,770,000円 90,000円 1,680,000円
1,500万円贈与 3,660,000円 190,000円 3,470,000円
2,000万円贈与 5,855,000円 335,000円 5,520,000円
2,500万円贈与 8,105,000円 485,000円 7,620,000円
3,000万円贈与 10,355,000円 680,000円 9,675,000円

上記の表の通りですが、500万円を現金で贈与する場合は、贈与税の負担は485,000円となりますが、不動産小口化商品を購入して贈与する場合は、相続税評価額が100万円になることから、贈与税の基礎控除額110万円を下回ることになり贈与税負担はゼロになります。

金額が大きくなるほど贈与税の負担も大きくなるため、多額の贈与をする時は、不動産小口化商品を活用するメリットも大きくなります。

5.専門家への相談

不動産小口化商品等について相談したい方は一般社団法人相続財産再鑑定協会にご相談ください。理事長の佐藤和基は相続税専門の税理士ですので、相続に関する知識や実績が豊富です。不動産小口化商品を活用した相続対策のご相談については、不動産特定共同事業者のご紹介が可能です。不動産小口化商品以外についても、相続に関する相談をお受けしています。

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