貸家建付地評価|一時的空室やアパート駐車場の評価単位を解説

貸家、賃貸アパート、賃貸ビルなどの賃貸物件が建っている土地を「貸家建付地」といいます。こちらのページでは貸家建付地の評価方法や一時的な空室が発生している場合、アパートに隣接する駐車場がある場合の評価方法について解説します。

1.貸家建付地とは

貸家建付地とは、自己が所有している土地の上に建築した建物を第三者に貸し付けている場合のその土地をいいます。
具体的には、貸家、賃貸アパート、賃貸ビルなどが考えられます。

ここでいう「建物を第三者に貸し付けている場合」とは、借地借家法の規定により、借家人の権利の保護が図られる建物の賃貸借契約があることを前提としています。
そのため、一時使用の賃貸借や賃貸の形態が使用貸借の場合には、借地借家法の保護は受けられず、貸家建付地評価とはなりません。
この場合は自用地評価となります。

2.貸家建付地の評価方法

貸家建付地の価額は、その宅地の自用地としての価額から、借家人の権利の価額を控除して評価します。
具体的には次の算式により評価します。

【算式】

自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=貸家建付地の評価額

〇借地権割合
借地権割合は、路線価又は倍率表で確認することができます。
例えば住宅街では借地権割合は60%程度になることが多く、地方など土地の価格の低いところでは、50%、40%と借地権割合は低くなります。
逆に都心部の商業地域などでは70%、80%、90%と借地権割合が高くなります。

〇借家権割合
借家権割合は、各国税局長が定めることになっていますが、現在、各国税局は30%と定めています。

〇賃貸割合
賃貸割合は、その貸家に係る各独立部分がある場合に、その各独立部分の賃貸の状況に基づいて、次の算式により計算します。
つまり、貸している部屋の床面積の割合となります。

【算式】

賃貸割合=賃貸されている各独立部分の床面積の合計/その借家の各独立部分の床面積の合計

 

3.一時的な空室

貸家建付地評価では、賃貸割合が高い方が評価額は低くなります。
つまり空室部分が多いと賃貸割合が低くなるため、評価額は高くなってしまいます。
ただし、相続発生時に空室があった場合でも、その空室が一時的なものである場合には、賃貸割合に含めることができます。

実務上、一時的な空室がどこまで認められるのかが重要となります。

国税庁の質疑応答事例では次のように「総合的に判断する」としています。

【国税庁の質疑応答事例】
アパート等の一部に空室がある場合の一時的な空室部分が、「継続的に賃貸されてきたもので、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められる」部分に該当するかどうかは、その部分が
①各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものかどうか
②賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたかどうか
③空室の期間、他の用途に供されていないかどうか
④空室の期間が課税時期の前後の例えば1ケ月程度であるなど一時的な期間であったかどうか
⑤課税時期後の賃貸が一時的なものではないかどうか
などの事実関係から総合的に判断します。

明確な基準ではありませんが、国税庁の見解としては「1カ月程度」というものが、一つの目安になりそうですが、あくまでも一つの要素に過ぎず、他の事情も考慮して総合的に判断することになります。

実務上、以前は半年から1年程度の空室でも一時的な空室と認められる傾向にありましたが、大阪高判平成29年5月11日判決で、空室の期間が5カ月以上のものは一時的な空室ではないとされました。

そのため、現在の実務では「5カ月以上」かどうかが判断の一つの目安になると思います。

4.一括借上げ(サブリース)で空室がある場合

一括借上げとは、自己が所有する賃貸アパートなどを1棟まるごと不動産会社等に貸し出す契約のことをいいます。

そのため、仮に賃貸アパートに空室が出た場合でも、オーナーの立場では不動産会社等に対して1棟まるごと貸し出しているため、賃貸割合は常に100%となります。

5.複数棟のアパートを一括借上げ(サブリース)している場合の評価単位

1カ所の土地に2棟、3棟と複数棟のアパートが建っており、1通の契約書で複数棟のアパートを一括借上げしてもらっている場合の評価について、評価単位を原則通り建物の敷地ごとに分けるのか、全体を一体として評価するのか迷うケースがあると思います。
結論としては、原則通り建物の敷地ごとに分けて評価を行います。
※原則として、貸家建付地は、貸家の各棟の敷地ごとに1画地として評価します。

考え方としては、東裁(諸)平25第111号・平成26年4月25日裁決が参考になります。

こちらの事例では、5棟の共同住宅を1通の契約書で一括借上げ契約していますが、①棟ごとの一括借上げ契約を1通の契約書にまとめたもの、②各建物は増築でも附属建物でもなく、各々が独立した構造、③借り上げた会社の敷地利用権は各建物の敷地の範囲ごとに及んでいると解釈されることから、建物の敷地ごとに評価単位を分けています。

なお、例えば母屋と離れのように各建物が一体として機能している特別の事情が認められる場合は、複数棟の建物を全体で一体評価するケースも考えらます。

6.アパートの入居者専用駐車場がある場合の評価単位

賃貸アパートに隣接する駐車場がある場合、土地評価の原則として地目別に行うことになります。
そのため、賃貸アパートは宅地、駐車場は雑種地となり、原則は別評価となります。
※宅地とは、不動産登記事務取扱手続準則68条3号に「建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地」と定められており、駐車場はこれに該当しません。
財産評価基本通達上、駐車場の地目は雑種地となります。

ただし、駐車場の貸付の状況が入居者専用で、アパートの入居者のみに貸している場合には、賃貸アパートと入居者専用駐車場を一体として、貸家建付地評価することができます。

7.アパートの入居者と外部貸しの駐車場がある場合の評価単位

賃貸アパートに隣接する駐車場の利用者が、入居者専用の場合は、駐車場を含めた全体を貸家建付地として評価することができますが、駐車場が入居者ではなく外部貸しの場合は、土地評価の原則の通り、賃貸アパート部分を貸家建付地として評価し、駐車場部分は自用地として評価することになります。

ここで、駐車場の利用者が入居者と外部貸しの両方が混在している場合はどうなるでしょうか?
意見が分かれる論点だと思いますが、東裁(諸)平22第112号・平成22年11月24日裁決では、入居者専用駐車場ではない場合、別評価と判断されています。
そのため、入居者専用駐車場ではない場合には、賃貸アパートの敷地のみ貸家建付地評価を行い、駐車場は別評価として自用地評価をすることになると思います。

ただし、状況によっては入居者と外部貸しの割合で評価額を按分する方法や、入居者と外部貸しの両方が混在している場合でも、入居者専用駐車場と同様にアパートと一体評価をして全体に貸家建付地評価をする方法も検討の余地があると思います。

例えば賃貸アパートに隣接する駐車場部分の容積率をすべて使っている場合です。
この場合は、アパートの敷地と駐車場の敷地を合わせた全体の敷地として建築確認がされているため、駐車場の敷地には使える容積率がなく、建物を建てることができません。
そのため、仮に駐車場が入居者専用駐車場でなかった場合でも、賃貸アパートの制限を駐車場も受けているといえます。
このような場合は、賃貸アパートと駐車場を一体評価して全体に貸家建付地評価をすることができるか、検討の余地があると思います。

賃貸アパートに隣接する駐車場が入居者専用駐車場であれば、基本的には問題なく一体評価できますが、入居者専用駐車場でなかった場合には、建ぺい率や容積率との兼ね合いから個々に判断をするべきだと思います。

8.アパート建築による相続税の節税

アパート建築が節税になる理由として、不動産の相続税評価額が時価よりも低く計算される点があります。
土地の相続税評価額については、時価の80%程度となります。
さらにアパート建築をして賃貸した場合には、上記2.貸家建付地の評価方法の通り、貸家建付地として評価額を下げることができます。
住宅街ですと借地権割合は60%程度になることが多いため、仮に借地権割合が60%の場合には、自用地評価額から18%評価額を下げることができます。

次に家屋の相続税評価額ついては、固定資産税評価額となりますが、固定資産税評価額は家屋の建築費の60%程度になります。
さらに賃貸している場合には、貸家として借家権30%を減額することができます。

具体例を紹介します。
前提条件は以下の通りとします。
〇更地の土地で時価1億円(相続税評価額8,000万円)を所有
〇上記の更地に建築費用1億円で賃貸アパートを建築
〇建築したアパートの固定資産税評価額は6,000万円
〇借地権割合は60%
〇空室はゼロ

上記の前提で具体的に計算をすると以下の通りとなります。

土地の相続税評価額
8,000万円×(1-60%×30%×100%)=6,560万円

家屋の相続税評価額
6,000万円×(1-30%×100%)=4,200万円

圧縮効果としては、土地が8,000万円から6,560万円の評価額になり、建築費用1億円は4,200万円の評価額になるため、トータルで7,240万円が財産から圧縮されることになります。

例えば相続税の税率が30%の場合には2,172万円の節税効果となります。
仮に相続税の税率が最低の10%の場合でも724万円の節税効果があるため、アパート建築による節税効果は大きいと言えるでしょう。

9.アパート経営よりも手軽な不動産小口化商品

アパート建築は節税効果も高く、家賃収入も得られるため相続対策として有効ですが、多額の資金が必要になってきます。
地主など更地を所有している方の場合には、土地の購入が不要なため建築資金のみでアパート経営を始めることができますが、土地を所有していない方は土地の購入も必要になるため、より多くの資金が必要になってきます。
資金面でアパート経営が難しい方には不動産小口化商品がお勧めです。
不動産小口化商品は融資が使えないなどのデメリットもありますが、1口100万円程度で始めることができます。
※会社によって最低500万円又は1,000万円などの下限のルールがあります。

不動産小口化商品のメリットとデメリットをまとめると以下の通りとなります。

メリット
〇少ない資金で手軽に購入できる
〇優良物件に投資できる
〇相続税の節税対策に活用できる
〇自分で不動産を管理する必要がない

デメリット
〇利回りが低くなる
〇融資が使えないため自己資金が必要になる
〇元本保証、賃料収入の保証がない
〇商品数が少ない

不動産小口化商品について詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。

10.アパート建築や不動産小口化商品を活用した節税の相談

アパート経営や不動産小口化商品を活用した節税について相談したい方は一般社団法人相続財産再鑑定協会にご相談ください。理事長の佐藤和基は相続税専門の税理士ですので、相続に関する知識や実績が豊富です。アパート経営等を検討している方にはハウスメーカー等の不動産会社のご紹介も可能です。アパート経営以外についても、相続に関する相談をお受けしています。

また、納税者に損をさせない申告を信念に、これから相続税申告業務に参入される税理士向けに相続税実務研修(通信講座Web視聴)を販売しております。
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