遺産分割協議中に亡くなった場合の相続税の取り扱いについて

メルマガの登録者様から「両親の共有名義(1/2ずつ)である不動産(賃貸経営)の相続について、片親が亡くなりましたが、相続税は発生しないことがわかりました。ところが遺残分割協議中に、もう片方の親も亡くなってしまった場合、先になくなった親の相続が未了のままだったため、相続人への新たな登記(名義変更)はしていない。前者のみの遺産では相続税は発生しませんが、後者のみでは発生します。先に亡くなった分の登記ができないままの不動産である場合、相続税は、どのような扱いになるのでしょうか。2人ずつ?それとも2人の合算ですか?」というご質問に対して、回答します。

1.ご質問の回答

ご質問の件について回答します。回答は下記のことを前提とします。

〇一次相続では相続税が発生しない
〇二次相続では相続税が発生する
〇一次相続の相続人は配偶者(二次相続で亡くなった方)と長男、二男(以下、「子達」という)の3人であり、二次相続の相続人は子達(一次相続の相続人の子と同一)2人

まず、先に亡くなった方を一次相続といい、次に亡くなった方を二次相続といいます。相続税の計算は亡くなった方の財産で計算をしますので、それぞれで計算を行います。

一次相続での相続財産は、亡くなった方の財産で計算をするためわかりやすいと思いますが、二次相続での相続財産がどうなるのかは、一次相続の遺産分割の仕方で変わります。

具体的には、一次相続の手続き中(未分割のまま)に二次相続が発生した場合には、一次相続の遺産分割で、二次相続で亡くなった方に一度相続させて二次相続の遺産分割で分けることもできます。

この場合には、二次相続での相続財産は、二次相続で亡くなった方の財産と、一次相続で相続をさせた財産の合算となります。

逆に一次相続の遺産分割で二次相続で亡くなった方の取り分をゼロにして、子達が直接相続することもできます。この場合には、二次相続での相続財産は、二次相続で亡くなった方の財産のみとなります。

そのため、相続税の観点からは一次相続と二次相続のシミュレーションを行い、トータルで最も有利になるように遺産分割をした方が良いと思います。

ご質問のケースでは、一次相続では相続が発生しないとのことですので、配偶者(二次相続で亡くなった方)の取り分はゼロにして、子達が相続した方が良いと思います。

理由としては、一次相続で配偶者(二次相続で亡くなった方)が相続した場合、二次相続の相続税を計算する際に相続財産が増えてしまうからです。

2.遺産分割協議

遺産分割協議とは、相続人全員の協議で遺産分割を行うことをいいます。

そこで目安となるのは法定相続分ですが、必ずしも法定相続分に従う必要はなく、相続人全員の合意があれば自由に決めることができます。

つまり取り分をゼロにすることができますし、逆に100%にすることもできます。

3.遺産分割協議中に相続人が死亡した場合

相続開始後に死亡した相続人がいる場合には、死亡した相続人が被相続人から承継した相続分は、死亡した相続人の相続人に移転します。

例えば、相続人が長男と二男の2人で、長男が亡くなった場合には、長男の相続人(妻や子)が相続分を引き継ぐため、長男の相続人と二男で遺産分割をすることになります。

ご質問のケースの場合は、相続人が配偶者と子達であるため、遺産分割協議中に配偶者が亡くなった場合には、遺産分割協議をする当事者が子達だけになります。

そのため、ご質問のケースでは、一次相続で配偶者が相続するか子達だけで相続するかは子達だけで判断できます。

4.二次相続のシミュレーション

ご質問のケースでは、一次相続で相続税が発生しないため二次相続での相続税だけを考えればよく、二次相続のシミュレーションはシンプルになりますが、一次相続でも相続税が発生する場合には、一次相続と二次相続の両方の相続税を計算しシミュレーションする必要があります。

一次相続では配偶者軽減があるため、配偶者の取り分を増やすことで一次相続の相続税を圧縮することができますが、二次相続の際の相続税が多額になってしまいます。

そのため、配偶者と子達の相続する割合を何%にすれば良いのかシミュレーションすることをお勧めします。

なお、場合によっては一次相続で配偶者軽減をあえて適用しないことで節税できるケースもあります。
この場合、一次相続でその分納税額が増えてしまいますが、二次相続の計算上、相次相続控除ができるため、一次相続での負担は税額控除ができ、かつ、一次相続での納税額が二次相続の計算上、債務控除できます。
計算がかなり複雑になるため、相続税専門の税理士にシミュレーションを依頼することをお勧めします。

5.専門家への相談

二次相続のシミュレーションについて相談したい方は一般社団法人相続財産再鑑定協会にご相談ください。理事長の佐藤和基は相続税専門の税理士ですので、相続に関する知識や実績が豊富です。

不動産の登記など相続税以外のご相談については、相続に詳しい司法書士等の専門家のご紹介が可能です。二次相続のシミュレーション以外についても、相続に関する相談をお受けしています。

また、納税者に損をさせない申告を信念に、これから相続税申告業務に参入される税理士向けに相続税実務研修(通信講座Web視聴)を販売しております。
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