高低差のある土地の相続税評価額を減額する方法

1.高低差のある宅地

評価対象地が周辺の土地よりも高低差がある場合には、利用価値が著しく低下している宅地として評価減をすることができます。

ただし、高低差があるからといって必ずしも評価減が認められるわけではありません。

高低差による評価減が認められるかどうかは、路線価に織り込み済みか否か、高低差の程度(何メートルか)などから判断します。

2.路線価に織り込み済みか否か

高低差による評価減が路線価に織り込み済みか否かは、現地の状況と路線価図を見て確認します。

具体的には、現地調査を行い、評価対象地と周辺の土地を比較して、周辺の土地も高低差があるようでしたら、その付近の宅地は高低差があることになり、路線価にも織り込み済みである可能性が高いと言えます。

逆に周辺の土地は高低差がなく、評価対象地だけ高低差があり周辺の路線価と比較して同一水準の路線価である場合には、高低差による評価減は織り込まれていないと言えます。

そのため、高低差による評価減が路線価に織り込み済みかどうかは、周辺の土地も高低差があるかどうか確認する必要があります。

3.高低差の程度

高低差は何メートル以上ならいいのか、明確な判断基準はありませんが、判例などによると1.2メートル程度の高低差で納税者の主張が認められているものがあります。
※国税不服審判所(平成19年4月23日裁決)

そのため、おそらく1メートル程度高低差のある土地については検討しても良いと思われます。

ただし、1メートル以上高低差がある場合でも、一部は高低差がなく出入口として利用できる場合や、車両の進入ができる場合などは高低差による評価減が認められません。

4.高低差による評価減が認められるポイント

高低差による評価減を適用するためには、下記のポイントを満たすかどうかなど、総合的に判断することになります。

〇路線価に高低差があることによる評価減が織り込まれていない
〇評価対象地と周辺の土地を比較して、周辺の土地は高低差がない(評価対象地だけ高低差がある)
〇高低差が1メートル以上ある
〇評価対象地の全体に高低差がある(例えば裏面側は高低差がないなど、出入口として利用できる場合は該当しない)

ただし、明確な判断基準があるわけではありませんので、個々に判断することになります。

5.高低差による評価減

評価対象地が高低差により、利用価値が著しく低下していると認められる場合には、10%評価減を行います。

なお、利用価値が著しく低下している要因が複数ある場合については、20%評価減を行うことができます。例えば、騒音があり、かつ、周辺に墓地がある場合には、騒音による減額10%と墓地周辺による減額10%を重複適用して20%の評価減を行います。

参考になる裁決事例として、国税不服審判所(平成13年6月15日裁決)があります。
こちらの裁決事例では、評価対象地が元墓地であったことにより10%の評価減を行っていることを是認した上で、震動及び騒音等により更に10%の評価減を行うことを認めています。(合計20%の評価減)

上記の裁決事例では高低差の論点ではありませんが、同様に解釈して良いと思います。

また、昭和55年6月24日付東京国税局長通達「個別事情のある財産の評価等の具体的な取扱いについて」では、2以上の事情により、利用価値が著しく低下していると認められる宅地にあっては、20%の評価減が認められていました。
現在のタックスアンサーNo.4617では、複数の要因がある場合の20%の評価減について記載がありませんが、国税不服審判所(平成13年6月15日裁決)を根拠に最大20%の評価減を行って良いと思います。

6.相続税還付の相談

高低差のある宅地について、高低差による評価減をせずに高い評価で相続税の申告をしてしまっている場合でも、亡くなってから5年10ヶ月以内であれば申告内容を修正することが可能です。払い過ぎていた分は税務署に返金してもらうことができます。

相続税の金額が適切であったか確認したい方は一般社団法人相続財産再鑑定協会にご相談ください。理事長の佐藤和基は相続税専門の税理士ですので、相続に関する知識や実績が豊富です。高低差のある宅地以外の項目についても適切であったか、相続税申告書の内容を無料で診断します。

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7.高低差のある宅地の評価根拠

高低差のある宅地の評価方法は財産評価基本通達では定められていません。そのため、根拠は国税庁のタックスアンサーNo.4617利用価値が著しく低下している宅地の評価となります。

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相続税の教科書(応用編)

  • 第1章.土地評価
  • 第2章.相続税還付
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