雑種地の評価方法|市街化調整区域内のしんしゃく割合も解説

1.雑種地とは

雑種地とは、宅地、田、畑、山林、原野、牧場、池沼及び鉱泉地以外の土地をいいます。具体的には、ゴルフ場、遊園地、運動場、競馬場、野球場、発電敷地、テニスコート、ドッグ、引込線敷地、鉄塔敷地、稲干場、塚地、柴草地、不毛地、砂地、土取場跡、鉄軌道用地、駐車場、資材置場等がこれに該当します。

このように多種多様な雑種地ですが、財産評価基本通達では、次の5区分の評価方法が定められています。

①ゴルフ場の用に供されている土地の評価(財産評価基本通達83)
②遊園地等の用に供されている土地の評価(財産評価基本通達83-2)
③文化財建造物である構築物の敷地の用に供されている土地の評価(財産評価基本通達83-3)
④鉄軌道用地の評価(財産評価基本通達84)
⑤①~④以外の雑種地(財産評価基本通達82)

以下、実務上で最も評価する機会の多い駐車場や資材置場等の⑤について説明します。

2.雑種地の評価

雑種地の価額は、原則として、その雑種地と状況が類似する付近の土地の価額を基とし、その土地その雑種地との位置、形状等の条件の差を考慮して評価します。

まずは路線価地域か倍率地域かを確認します。倍率地域に該当する場合には、市街化区域か市街化調整区域かを確認して評価をすることになります。

3.路線価地域の雑種地の評価

路線価地域の雑種地は、基本的には宅地と同様に評価を行います。なお、現況が農地や山林に類似する等の場合は宅地造成費の控除も検討します。

4.倍率地域の雑種地の調査

倍率地域の雑種地については、まず市街化区域か市街化調整区域か確認します。市街化区域か市街化調整区域かは、役所の都市計画課等で都市計画図を閲覧することで確認できます。役所よっては、HPからも都市計画図を確認できます。

また、役所によっては固定資産税の課税明細書等に市街化区域か市街化調整区域か記載されているものもあります。市街化区域か市街化調整区域か確認ができましたら、以下、評価方法について説明します。

5.倍率地域の雑種地の評価(市街化区域)

市街化区域にある雑種地を倍率方式で評価する場合には、宅地比準方式で評価することになります。雑種地の現況が駐車場や資材置場のように宅地に類似する場合は当然に宅地比準方式で評価することになります。

また、雑種地の現況が農地や山林に類似する場合は、市街化農地や市街化山林と同様の評価方法により評価することになりますが、市街化農地や市街化山林は宅地であるとした場合の価額から、宅地に転用する場合の造成費を控除する宅地比準方式で評価することになります。

そのため、市街化区域にある雑種地は宅地として評価することになります。

なお、1㎡当たりの価額は近傍宅地の固定資産税評価額に宅地の評価倍率を乗じて求め、画地調整率は普通住宅地区にあるものとして各種補正を行います。近傍宅地の固定資産税評価額は固定資産税の路線価又は役所の資産税課等で確認できます。

固定資産税の評価明細書を発行依頼する場合には、備考欄に記載してもらうこともできます。具体的な評価方法は下記の算式の通りとなります。

【算式】
市街化区域内雑種地の評価額=(近傍宅地の1㎡当たりの固定資産税評価額×宅地の倍率×普通住宅地区の画地補正率-1㎡当たりの宅地造成費)×地積

6.倍率地域の雑種地の評価(市街化調整区域)

市街化調整区域にある雑種地を倍率方式で評価する場合には、現況が類似する地目の判定を行います。類似する地目が農地、山林、原野(以下「農地等」といいます)である場合には、農地比準、山林比準、原野比準(以下「農地等比準」といいます)方式で評価することになります。

農地等比準方式
農地等比準方式は下記の算式で評価します。

【算式】
雑種地の評価額=(近傍農地等の1㎡当たりの固定資産税評価額×農地等の倍率+宅地造成費)×地積

農地等比準方式の場合には、宅地造成費を加算して評価するのですが、その理由としては、例えば山林比準の場合、山林から雑種地にするには木を伐採するなどの造成費がかかることから、造成されている分だけ山林より雑種地の方が価値が高いからとなります。

類似する地目が宅地の場合には、宅地比準方式で評価することになりますが、市街化区域との違いは、市街化調整区域では建築制限があるため、建築制限の程度に応じて一定のしんしゃく割合を減額することができます。

宅地比準方式
市街化調整区域内の宅地比準方式は下記の算式で評価します。

【算式】
雑種地の評価額=(近傍宅地の1㎡当たりの固定資産税評価額×宅地の倍率×普通住宅地区の画地補正率×(1-しんしゃく割合)-1㎡当たりの宅地造成費)×地積

宅地比準方式の場合には、宅地造成費を控除して評価するのですが、その理由としては、雑種地の状態から整地、伐採などの造成費をかけて宅地の状態にすることから、農地等比準方式とは逆に控除します。

なお、二方以上の道路に接している場合については、8.二方以上の道路に接している場合の宅地比準方式の評価で説明します。

7.市街化調整区域内の雑種地の建築制限(しんしゃく割合)

市街化調整区域内の雑種地を宅地比準方式で評価する場合の建築制限による減額のしんしゃく割合は、下記のように判断します。

〇店舗等の建築が可能な幹線道路沿いや市街化区域との境界付近である場合には、減額のしんしゃく割合はゼロとして評価します。

例えば、都市計画法第34条第11号の条例指定区域に該当し、一般住宅、共同住宅等の建築を目的とした開発行為も認められる場合となります。※都市計画法第34条第10号・11号・12号が該当します。

なお、都市計画法第34条第10号・11号について地積が500㎡以上(三大都市圏以外は1,000㎡以上)の場合には地積規模の大きな宅地についても該当するか検討します。
都市計画法第34条第12号については、国税不服審判所裁決事例(令和6年3月6日裁決)により、地積規模の大きな宅地に準じて評価することはできないと判断されています。

〇幹線道路沿いや市街化区域との境界付近にあって、市街化の影響度を受けるとともに、市街化調整区域による法的規制は受けるが、沿道サービス施設等一定の用途であれば建築が許可される場合には、減額のしんしゃく割合は30%として評価します。

例えば、都市計画法第34条第1号の日用品店舗等、第9号の沿道サービス施設であれば開発又は建築が可能な土地となります。※都市計画法第34条第1号~9号・13号・14号が該当します。

なお、こちらは地積が500㎡以上(三大都市圏以外は1,000㎡以上)の場合でも、地積規模の大きな宅地の評価はできません。

〇市街化調整区域の土地として一般的な法規制を受ける場合には、減額のしんしゃく割合は50%として評価します。

つまり開発行為や建築が許可されずに、駐車場や資材置場等の低利用に留まる土地となります。なお、こちらは地積が500㎡以上(三大都市圏以外は1,000㎡以上)の場合でも、地積規模の大きな宅地の評価はできません。

8.二方以上の道路に接している場合の宅地比準方式の評価

市街化調整区域内の雑種地を宅地比準方式で評価する場合に、評価対象地が角地で二方以上の道路に接している場合があります。その場合の評価方法については、解説している書籍がほとんど存在しません。

合理的に考えると、二方以上に接していることによる価値の増加を加算調整する必要があると思われますので、側方路線影響加算等をする必要があると思われます。ただし、当事務所では側方路線影響加算はしたことがありません。

当初申告の場合には税務署がスルーしているだけの可能性もありますが、更正の請求(還付請求のことです)で、当初申告では側方路線影響加算をしていたものについて、側方路線影響加算を外したことがありますが、無事に還付を受けることに成功しました。

また、国税不服審判所の裁決事例の中には側方路線影響加算を適用していないものがあります。

以上の点から、側方路線影響加算はしなくても良いと判断していますが、見解の分かれる論点だと思いますので、個々で判断をすることになると思います。

9.無道路地の場合の建築制限(しんしゃく割合50%)との併用適用の可否

無道路地について、市街化調整区域内の雑種地の建築制限による減額のしんしゃく割合が50%の場合、無道路地補正との併用適用はできません。

理由としては、無道路地の評価は、そもそも建築制限による減価であると解されるところ、無道路地として評価した価額から、更に建築制限による50%の減価をしてしまうと、建築制限による減価を二重に行うこととなり不相当と考えられるからです。

この建築制限による減価の考え方は、非線引き都市計画区域内に存する雑種地の評価ですが、国税不服審判所裁決事例(平成19年6月22日裁決)の考え方が参考になります。なお、都市計画道路予定地に該当する場合も建築制限50%との併用適用はできません。

10.相続税還付の相談

雑種地の評価について、宅地造成費を控除していない、建築制限の評価減をしてない等の高い評価で相続税の申告をしてしまっている場合でも、亡くなってから5年10ヶ月以内であれば申告内容を修正することが可能です。払い過ぎていた分は税務署に返金してもらうことができます。

相続税の金額が適切であったか確認したい方は一般社団法人相続財産再鑑定協会にご相談ください。理事長の佐藤和基は相続税専門の税理士ですので、相続に関する知識や実績が豊富です。雑種地以外の項目についても適切であったか、相続税申告書の内容を無料で診断します。

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11.雑種地の評価根拠

雑種地の評価の根拠は財産評価基本通達82となります。

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相続税の教科書(応用編)

  • 第1章.土地評価
  • 第2章.相続税還付
  • 第3章.生命保険
  • 第4章.相続手続
  • 第5章.生前対策
  • 第6章.相続と相続税
  • 第7章.山林等の処分
  • 第8章.相続の統計情報