受付時間 | 10:00~20:00(平日) 10:00~12:00(土日祝日) |
---|
相続開始の時点で相続人の存否が不明な場合や、相続開始時には相続人がいたものの、相続人全員が相続放棄をするなどにより、相続人が存在しなくなった場合には、相続人が不存在ということになります。
相続人が不存在の場合には、相続財産は法人となります。
この法人を相続財産法人といいます。
なお、相続財産法人が成立した後に相続人の存在が明らかになった場合には、相続財産法人は成立しなかったものとみなされます。
相続財産法人が成立した場合(相続人が不存在の場合)には、利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所が相続財産管理人を選任することになります。
利害関係人とは、債権者、特定遺贈の受遺者、特別縁故者などです。
相続財産管理人は、被相続人の債務を支払うなどの清算と相続人等を捜すための公告を行います。
相続人の不存在が確定し、特別縁故者から相続財産の分与を求める申立てがあった場合、相続財産管理人は特別縁故者に対する相続財産分与の手続きを行います。
特別縁故者の財産分与の申立てがない場合や、財産分与後も相続財産が残る場合には、その残余財産は国庫に帰属します。
特別縁故者が相続財産の全部又は一部の分与を受けた場合には、その分与を受けた者が、その分与時の時価により、被相続人から遺贈により取得したものとみなされて相続税が課税されます。
注意すべき点としては、相続開始時の時価ではなく、分与時の時価になります。
また、適用される法令は分与時ではなく相続開始時の法令となります。
相続税の基礎控除額については、相続人が不存在で0人のため、3,000万円×600万円×0人で3,000万円となります。
ただし、相続人の全員が相続放棄をして相続人が不存在となっている場合には、法定相続人の数は0人にはなりませんので、法定相続人の数に基づいて基礎控除額も計算します。
他にも相続税の負担が20%増しになります。
例)
被相続人Aは平成26年1月6日に死亡し、内縁の妻であり同居して療養看護に努めてきたBが特別縁故者として令和元年6月10日に相続財産の一部について財産分与を受けました。
相続財産は下記の通りです。
〇預貯金等3,000万円
〇自宅の土地(平成26年の相続税評価額5,000万円、令和元年の相続税評価額6,000万円)
特別縁故者Bは預貯金等のうち1,500万円と土地の財産分与を受け、残りの預貯金1,500万円は国庫に帰属しました。
この場合、土地の評価は財産分与を受けた令和元年の相続税評価額6,000万円で評価をしますが、平成26年の法令に基づき相続税の計算を行います。
なお、小規模宅地等の特例については、内縁の妻は配偶者又は一定の親族に該当せず、財産分与も民法上は遺贈により取得したものとみなされますが、租税特別措置法においては、相続財産の分与を受けた場合を遺贈とみなす規定がないことから、適用することはできません。
配偶者軽減についても、内縁の妻は婚姻関係にないため、適用できません。
①課税価格
預貯金等1,500万円+土地6,000万円=7,500万円
②基礎控除額
5,000万円+1,000万円×0人=5,000万円
※平成27年1月1日以降は相続税法の改正により基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数となりましたが、平成26年12月31日以前の基礎控除額は5,000万円+1,000万円×法定相続人の数でした。
③課税遺産総額
7,500万円-5,000万円=2,500万円
④相続税の総額
2,500万円×15%-50万円=325万円
⑤相続税の2割加算
325万円×20%=65万円
⑥納付すべき相続税額
325万円+65万円=390万円
相続税の申告期限については、財産分与があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内となるため、申告期限は令和2年4月10日になります。
特別縁故者が財産分与を受ける場合は、法定相続人が相続する場合と比較して適用されない特例があるなど、注意する点がいくつかあるため、注意点をご紹介します。(上記2.特別縁故者の相続税申告と具体的計算例の説明と重複する点も含めて紹介します。)
①基礎控除額は基本的には3,000万円
特別縁故者が財産分与を受けるのは相続人が不存在の場合のため、基礎控除額は基本的には3,000万円となります。
ただし、相続人の全員が相続放棄をして相続人が不存在となった場合には、法定相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)の数で基礎控除額を計算します。
②相続税評価は財産分与時の時価
通常の相続税申告では、相続開始時の時価で財産評価を行いますが、特別縁故者が財産分与を受けた場合の財産評価は、分与時の時価となります。
③適用される法令の時期
相続財産は分与時の時価となりますが、適用される法令は相続開始時のものとなります。
そのため、相続開始時から財産分与時までの間に相続税法の大きな改正があった場合などは注意が必要です。
④小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例には特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等、特定居住用宅地等及び貸付事業用宅地等がありますが、特別縁故者は要件を満たすことができずに適用できません。
⑤配偶者に対する相続税額の軽減
配偶者が財産を相続した場合には、配偶者の法定相続分に相当する金額(1億6,000万円未満の場合には1億6,000万円)は配偶者軽減により相続税から控除されます。
この配偶者は婚姻関係にある配偶者となるため、内縁の妻や事実婚の場合には配偶者と認められず、特別縁故者には適用されません。
⑥未成年者控除
未成年者控除は、法定相続人である必要があるため、特別縁故者は未成年者であったとしても適用することはできません。
⑦障害者控除
障害者控除は、法定相続人である必要があるため、特別縁故者は障害者であったとしても適用することはできません。
⑧相次相続控除
相次相続控除は、被相続人が過去10年以内に相続税を納めたことがある場合に、相続人が納める相続税から一部控除を受けることができますが、特別縁故者は相続による取得ではないため、適用することはできません。
⑨相続税の申告期限
通常の相続税の申告期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内となっています。
しかし、特別縁故者が財産分与を受けるのは、相続開始から10ヶ月以上経過しているケースが考えられます。
そのため、特別縁故者が財産分与を受けた場合の相続税の申告期限は、財産分与があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内となります。
⑩不動産取得税と登録免許税の負担
特別縁故者が財産分与を受けた財産の中に不動産がある場合は、不動産取得税がかかります。(相続人が不動産を相続した場合は不動産取得税がかかりません。)
また、登録免許税も相続の場合は0.4%ですが、特別縁故者の場合は2%になります。
財産分与の手続きや相続税申告について相談したい方は一般社団法人相続財産再鑑定協会にご相談ください。理事長の佐藤和基は相続税専門の税理士ですので、相続に関する知識や実績が豊富です。
財産分与の手続きについては弁護士等の専門家をご紹介可能です。
また、納税者に損をさせない申告を信念に、これから相続税申告業務に参入される税理士向けに相続税実務研修(通信講座Web視聴)を販売しております。
【税理士事務所向け】相続税実務研修(Web配信)について詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。