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令和7年12月19日に令和8年度税制改正大綱が公表されました。
こちらのページでは、貸付用不動産(賃貸アパート、賃貸マンション、賃貸ビルなど)について税制改正による変更内容と、これから貸付用不動産を活用して節税をしようと検討している方向けに対策方法を徹底的に解説します。
貸付用不動産とは、令和8年度税制改正大綱によると「被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産」と記載されています。
そのため、現時点では何をもって「貸付用不動産」と定義されるのかは明確ではありません。
賃貸アパート、賃貸マンション、賃貸ビルなどは該当すると思いますが、例えば相続開始時又は贈与時に空室だった自用地評価される不動産は該当するのかどうか、駐車場として貸し付けている土地など、どこまで該当するのかは、今後、公表される財産評価基本通達で明らかにされると思います。
例えば、空室の場合には自用地評価となるため、改正前の貸家建付地評価よりは評価額が高くなってしまいますが、市場価格と路線価評価の乖離が大きい土地であれば、貸付用不動産としての評価を避けるため、意図的に空室の状態にして贈与をすることで、回避できる可能性も考えられます。
つまり下記のようなケースです。
改正後の貸付用不動産としての評価 > 自用地評価 > 改正前の貸家建付地評価
土地の評価について
一般的な土地の評価額(路線価評価)は時価の80%程度になっています。
さらに賃貸アパートなど、貸しているものは貸家建付地としての評価額になります。
貸家建付地の評価は借地権割合にもよりますが、20%前後、評価額が下がります。
貸家建付地の評価は下記の算式で計算します。
【算式】
自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=貸家建付地の評価額
※借地権割合は路線価図又は倍率表で確認できます。
借家権割合は全国一律30%です。
住宅街ですと借地権割合は60%か70%程度になることが多いため、仮に借地権割合が60%の場合には、自用地評価額から18%評価額を下げることができますし、借地権割合が70%の場合には、自用地評価額から21%評価家具を下げることができます。
建物の評価について
家屋の相続税評価額ついては、固定資産税評価額となりますが、固定資産税評価額は家屋の建築費の60%程度になります。
さらに賃貸している場合には、貸家として借家権30%を減額することができます。
上記の土地の評価と建物の評価は一般論になりますが、土地の路線価評価が時価の80%程度というのも実際には都心部と地方では大きく差が出るケースがあり、都心部では路線価評価が時価の50%程度になってしまうケースや場合によってはもっと下がるケースもあります。
例えば、令和4年4月19日最高裁判決の事例では、不動産の購入金額13億8,700万円に対して、財産評価基本通達に基づいて計算した相続税評価額が3億3,000万円まで下がっていました。
こちらの事例では、相続開始前に借入をして節税目的での購入であったことから、財産評価基本通達6項により否認を受けて、納税者敗訴となっています。
財産評価基本通達6項には「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の評価は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」と定められています。
つまり「行き過ぎた節税対策」に適用されます。
ただし、財産評価基本通達6項は伝家の宝刀と言われ、むやみやたらに適用されることはありません。
近年、財産評価基本通達6項による評価に係る訴訟等が増加傾向にあり、こうした個別の対応について、「納税者の予言可能性といった観点からの批判等」があり、「評価方法の明確化等が要請」されていました。
令和4年4月19日最高裁判決の事例について、詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
被相続人等が課税時期(相続、遺贈又は贈与)前5年以内に取得又は新築した一定の貸付用不動産は、「通常の取引価額」で評価をすることになりました。
この「通常の取引価額」は、課税上の弊害がない限り、「取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の80%」で評価することができます。
地価の変動等をどのように考慮するのかは、まだ明確になっていませんが、例えば「取得した年の路線価」と「課税時期の路線価」を比較して、地価の変動率を計算する方法などが考えられます。
この改正は令和9年1月1日以後に相続等により取得をする財産の評価に適用されます。
ただし、この改正は、この改正を通達に定める日(まだいつになるか明確ではありませんが、令和8年の夏から秋頃ではないかと思います)までに、被相続人等がその所有する土地(この改正を通達に定める日の5年前から所有しているものに限ります)に新築をした家屋(建築中のものを含みます)には適用しません。
つまり、少なくても現時点で5年以上所有している土地がある場合には、通達が公表される前に新築をすることで、この改正の適用を回避することができます。
そのため、駆け込みでの建築が増える可能性があります。
今回の税制改正は、相続税対策を企図した相続直前での駆け込み取得等が問題視されて評価方法が変更されることになりました。
不動産小口化商品については、取得時期に関わらず令和9年1月1日以降は節税効果がなくなってしまいますが、貸付用不動産については、課税時期前5年以内の取得又は新築に限られていますので、取得又は新築から5年経過することで、従来の評価方法で評価することができます。
そのため、今後はより早期に対策をすることが求められます。
亡くなる直前での対策は規制されることになりますので、今後は長期所有を想定して利回りなど、収益性を重視した取引が増えると思います。
なお、既に貸付用不動産を取得していて、5年以内に相続の発生する可能性のある方については、令和8年12月31日までに生前贈与をすることで、「贈与時の評価額」で移転させることができます。
暦年課税では贈与税負担が大きくなってしまうため、基本的には相続時精算課税制度との組合せをすることになると思います。
相続時精算課税制度について詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。
貸付用不動産の対策については、貸付用不動産の金額、依頼者の年齢等によって、適切な対策方法は異なりますので、相続税専門の税理士など、詳しい専門家に相談をする必要があります。
収益物件の購入やアパート建築等の節税対策を検討している方は、一般社団法人相続財産再鑑定協会及び佐藤和基税理士事務所にご相談ください。
代表の佐藤和基は相続税専門の税理士ですので、相続に関する知識や実績が豊富です。
ハウスメーカー等の不動産会社との提携もありますので、複数社のプランを比較することも可能です。
相続税の試算、収益物件の購入時期や新築開始時期による改正の適用有無、節税効果のシミュレーションなど、アドバイスさせていただきます。
令和8年度税制改正の内容を踏まえて、貸付用不動産に関するご相談は初回の相談料を無料とさせていただきます。