相続土地国庫帰属制度|審査手数料と負担金について詳しく解説

相続した不要な土地を国庫に帰属させることができる「相続土地国庫帰属制度」が令和5年4月27日から開始しました。
相続土地国庫帰属制度は一定の要件を満たす必要がありますが、一定の要件を満たす場合には、審査手数料と負担金を負担することで不要な土地を手放すことができます。
相続土地国庫帰属制度について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

ここでは、相続土地国庫帰属制度を利用する場合の審査手数料と負担金について、具体的な金額を計算して解説します。

1.相続土地国庫帰属制度の審査手数料

相続土地国庫帰属制度の利用には、承認申請時の審査手数料と承認を受けた場合の10年間の標準的な土地の管理費用相当額の負担金が費用として発生します。
審査手数料については、土地1筆当たり14,000円となります。
土地が隣接しているか否かを問わずに筆数で計算します。
納付方法は、申請時に、申請書に審査手数料の額に相当する額の収入印紙を貼って納付することになります。

なお、審査手数料は、申請を取り下げた場合や、審査の結果、却下・不承認となった場合でも、手数料は返還されませんので注意が必要です。

2.相続土地国庫帰属制度の負担金

負担金については、地目や面積によって異なっています。

草刈り等の管理が必要な一部の市街地等の土地を除き原則として20万円となります。
なお、負担金については、審査手数料の計算とは異なり、隣接する2筆以上の土地のいずれもが同一の土地区分である場合、申出をすることで、それらを1筆の土地とみなして負担金を算定することができます。

草刈り等の管理が必要な一部の市街地等の土地については、土地の面積に応じて負担金の額を算定します。
具体的な算定方法は下記の通りです。
※千円未満の端数は切捨てとなります。

①宅地のうち、都市計画法の市街化区域又は用途地域が指定されている地域内の土地

面積区分 負担金額
50㎡以下 地積×4,070円+208,000円
50㎡超100㎡以下 地積×2,720円+276,000円
100㎡超200㎡以下 地積×2,450円+303,000円
200㎡超400㎡以下 地積×2,250円+343,000円
400㎡超800㎡以下 地積×2,110円+399,000円
800㎡超 地積×2,010円+479,000円

②主に農用地として利用されている土地のうち、次のいずれかに掲げるもの
〇都市計画法の市街化区域又は用途地域が指定されている地域内の農地
〇農業振興地域内の農用地区域の農地
〇土地改良事業等の施行区域内の農地

面積区分 負担金額
250㎡以下 地積×1,210円+208,000円
250㎡超500㎡以下 地積×850円+298,000円
500㎡超1,000㎡以下 地積×810円+318,000円
1,000㎡超2,000㎡以下 地積×740円+388,000円
2,000㎡超4,000㎡以下 地積×650円+568,000円
4,000㎡超 地積×640円+608,000円

③森林

面積区分 負担金額
750㎡以下 地積×59円+210,000円
750㎡超~1,500㎡以下 地積×24円+237,000円
1,500㎡超~3,000㎡以下 地積×17円+248,000円
3,000㎡超~6,000㎡以下 地積×12円+263,000円
6,000㎡超~12,000㎡以下 地積×8円+287,000円
12,000㎡超 地積×6円+311,000円

④その他(雑種地、原野、池沼、海浜地等)
20万円

審査の結果、要件を満たしていた場合は、法務大臣から承認の通知と負担金の通知がされますので、承認申請者は、承認を受けて負担金の通知を受けた日から30日以内に負担金を納付する必要があります。
30日に以内に納付しない場合は、承認の効力が失われてしまうため注意が必要です。

3.宅地、農地、森林の審査手数料と負担金の具体的な計算

①市街化調整区域にある2筆(隣接)の宅地で500㎡の場合

【審査手数料】
14,000円×2筆=28,000円
土地が隣接しているか否かに関わらず筆数で計算します。

【負担金】
200,000円
市街化調整区域は原則として用途地域が定められていないため、原則の20万円となります。
なお、2筆の場合でも隣接している1か所の場合には、申出をすることで1筆の土地とみなして負担金を計算します。

【審査手数料と負担金の合計金額】
28,000円+200,000円=228,000円

②草刈り等の管理が必要な市街化区域にある1筆の宅地で330㎡の場合

【審査手数料】
14,000円×1筆=14,000円

【負担金】
330㎡×2,250円+343,000円=1,085,500円

【審査手数料と負担金の合計金額】
14,000円+1,085,500円=1,099,500円

③農用地区域内の5筆の農地(隣接)で2,500㎡の場合

【審査手数料】
14,000円×5筆=70,000円
土地が隣接しているか否かに関わらず筆数で計算します。

【負担金】
2,500㎡×650円+568,000円=2,193,000円

【審査手数料と負担金の合計金額】
70,000円+2,193,000円=2,263,000円

④5筆(隣接)の森林で10,000㎡と3筆(隣接)の森林で30,000㎡の2か所の場合

【審査手数料】
14,000円×8筆=112,000円
土地が隣接しているか否かに関わらず筆数で計算します。

【負担金】
(10,000㎡×8円+287,000円)+(30,000㎡×6円+311,000円)=858,000円
複数の筆の場合でも隣接している1か所の場合には、申出をすることで1筆の土地とみなして負担金を計算します。
事例の場合は2か所のため、2筆の土地とみなして計算します。

【審査手数料と負担金の合計金額】
112,000円+858,000円=970,000円

具体的な金額を計算して4つ事例を紹介しましたが、草刈り等の管理が必要な一部の市街地等に該当してしまう場合は、計算してわかるように宅地は330㎡(100坪)で100万円を超える負担になってしまいます。
農地についても、2,500㎡で200万円を超えてしまいますが、仮に1,000㎡で計算をしても100万円は超えてしまいます。

逆に森林は40,000㎡(4ヘクタール)でも100万円以内の負担となります。
※事例では筆数を8筆で場所も2か所で計算していますが、1筆で1か所の場合には100,000㎡(10ヘクタール)でも100万円以内となります。
仮に10,000㎡(1ヘクタール)で計算をすると1筆の場合は審査手数料込みで381,000円となりますので、宅地や農地と比較すると負担が少ないことがわかります。

4.相続土地国庫帰属制度が予算を超える場合の山林引き取りサービスの活用

相続土地国庫帰属制度を利用しようと検討した結果、残念ながら要件を満たさずに利用できないケースや審査手数料と負担金が予算を超えて利用できないケースがあると思います。
相続土地国庫帰属制度が利用できずお困りの場合は、一般社団法人相続財産再鑑定協会にご相談ください。

一般社団法人相続財産再鑑定協会では、山林等を専門に扱う不動産会社等と提携して山林引き取りサービスを実施しています。
※地目は山林以外も引き取り可能です。

山林引き取りサービスの具体的な内容について説明します。

〇申込ができる人
相続土地国庫帰属制度は相続等により土地を取得した人か共有者の中に相続等により土地を取得した人がいる場合でないと申請できません。
山林引き取りサービスは、取得原因を問わずに申込可能です。
相続又は遺贈だけでなく、原野商法で騙されてしまった方、売買、贈与などにより取得した方、個人か法人かを問わずご利用いただけます。
また、申込は基本的には不動産の所有者ですが、ご家族の方やご相談を受けている士業、不動産会社の方による代理でのお申込みも可能です。

〇申込先
山林引き取りサービスのお申込みは、まずはお問合せフォームからお問合せください。
※一般社団法人相続財産再鑑定協会及び佐藤和基税理士事務所のどちらからお問合せいただいても対応可能です。
お問合せをいただいた方にメール添付にて、申込書を送付しますので、申込書と必要資料(固定資産税の課税明細書など)をメール、郵送、FAXなどでお送りいただけましたら、引き取り費用のお見積りをします。
なお、事務負担の関係で郵送等で提出していただく場合は、資料の返却を行っておりません。
そのため、郵送等の場合はコピーでの提出をお願いします。

相続土地国庫帰属制度は、引取の審査に半年から1年かかる見込みですが、山林引き取りサービスのお見積りは1カ月程度で可能です。
※お急ぎの方は最短で翌日から1週間以内にお見積りを提示可能です。(お急ぎの場合は複数社での相見積りができないため、他社との比較ができない点はご了承ください。)

〇手数料について
相続土地国庫帰属制度は申請時に審査手数料が1筆当たり14,000円かかりますが、山林引き取りサービスはお見積りまでは無料となります。
引取可能な場合には、引取費用が発生します。
※基本的には引取費用をお支払いいただくサービスですが、物件によっては無償又はプラスでの売買が可能なケースもあります。

〇引き取り可能な土地
基本的には地目を問わず、すべての不動産について引き取り可能です。
農地は農地転用(他の地目に変更)可能な場合に引き取り可能です。お見積りの結果、予算を超えてしまうなどの理由で山林引き取りサービスを利用されない方もいますが、お見積りまでは無料のため、お見積りの結果、山林引き取りサービスの利用をしない方には費用は発生しません。

5.相続土地国庫帰属制度と山林引き取りサービスの比較

相続土地国庫帰属制度と山林引き取りサービスのいずれも処分費用(負担金)が発生しますが、山林引き取りサービスは審査手数料が発生せず、引き取りできない土地も基本的には農地(農地も積極的に引き取っていますが、一部の農地は引き取りできないケースもあります)だけのため、相続土地国庫帰属制度が引き取り不可能な土地でも山林引き取りサービスでは引き取り可能です。また、山林引き取りサービスは相続とは関係なく誰でも利用可能です。
なお、物件によっては山林引き取りサービスでは、処分費用がかからないケースもあります。

  山林引き取りサービス 相続土地国庫帰属制度
利用できる人 個人法人問わず誰でも可 相続等で取得した人のみ
共有の場合 1人だけでも可 共有者全員でないと不可
審査手数料 無料 発生する
負担金 無料又は発生する 発生する
引き取りできない土地 農地以外はなし※1 10項目ある
承認の取消し(契約不適合責任) 基本的になし※2

ある

審査期間 1ヶ月~2ヶ月 半年~1年の見込み

※1.農地は農地転用(他の地目に変更)可能な場合に引き取り可能です。
農地転用できない場合、提携先に農地所有適格法人がありますので、条件があえば引き取り可能なケースもあります。
※2.山林引き取りサービスの提携先は基本的には不動産会社であり、引き取るリスクを承知での契約となるため、基本的には契約不適合責任は発生しませんが、一部不動産会社以外が引き取り主となるケースもあるため、契約時にご確認ください。

6.山林引き取りサービスの引き取り後の活用例

山林引き取りサービスをご利用いただく不動産は、売買や寄付ができずに手放せない物件となりますので、一般的には活用が困難であるケースが大半です。
そのため、引き取り後に長期保有となってしまうことが多いですが、活用できるケースでは下記のようなものがありました。
〇キャンプ場やサバゲーとして利用
〇別荘地として利用
〇キノコの栽培目的で利用
〇植木屋が植木を育てるために利用
〇林業として利用
〇猟師が狩猟目的で利用
〇自然保護活動をしている団体が自然を再生すために利用
〇太陽光発電設備の設置のために利用(農業を継続できる営農型太陽光発電など)

7.山林・原野・別荘地・農地を手放す相談

不要な不動産の処分でお困りの方は、一般社団法人相続財産再鑑定協会及び佐藤和基税理士事務所にご相談ください。
山林引き取りサービスは審査手数料等が発生しませんし、お見積りまでは無料となりますので、気軽にご相談できます。
また、相続土地国庫帰属制度の利用と同時並行でのご相談も可能です。

8.不動産会社の方にお勧めの資格

不動産業界は、物件の売買・賃貸を仲介する不動産仲介業者、商業施設、ビル、マンション等の開発業者、注文住宅等を手がけるハウスメーカー、マンションや一戸建ての販売を手がける住宅販売会社、不動産物件を管理する管理会社など、その業務は多岐にわたります。

不動産業の方には相続土地国庫帰属診断士の資格がお勧めです。

多岐にわたる不動産業の中でも、山林、原野、別荘地、農地などの問題解決は困難なものですし、専門に扱う方は少ないのが実情です。
相続土地国庫帰属診断士は、相続土地国庫帰属制度や山林引き取りサービスの内容を理解して、不要な不動産の処分にお困りの方に対して提案をすることで、問題解決にお役立ちできる可能性があります。
また、不要な不動産の問題解決をすることで、顧客との信頼関係を築くことができ、他の宅地の売買等のご相談を受けるきっかけとなります。

相続土地国庫帰属診断士について詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。

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